オオカミさんはウサギちゃんを愛でたい。

 ……シーーーン


「え、ぜんぶ? あたしに言ったこともハッキリと覚えてる?」
「忘れた」

 あからさまに視線を外される。

「覚えてるんだ!」
「知らね」
「大地くんは酔っ払うと素直になるんだね」
「なんのことだか」
「エプロンしてたら。あたし、新妻みたいなの?」

 全然こっち見てくれなくなった。
 図星ってこと?

「酔ってる大地くんなら。あたしでも押し倒せそう」
「舐めんなよ」
「山田さんにあたしとのこと言った?」
「海月が勝手にベラベラ話しやがった」
「あー。いったんだ!」

 ご飯を食べて支度をすると、一階に降りる。
 遊園地楽しみだなあ。

「美香さん」

 ――――!

「探しましたよ」

 いるはずのない男が、店先にいる。

「……なんで」

 義理の弟――朔也(もとなり)が、どうしてここにいるの。

「あんた全寮制の学校に通ってるでしょ」
「帰省しました」
「ふーん」
「ふーん、じゃ。ありません」
「大きくなったね。ビックリした」

 近づいて見上げてみると、175はありそうだ。
 それでも大地くんの方がずっと大きいわけだか、最後に見たとき160くらいだったと記憶してる。
 男の子の成長ってすごい。

「帰りますよ」

 …………は?
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