オオカミさんはウサギちゃんを愛でたい。

「た、助けてくれえ!!」

 いや助けて欲しいのは、こっちの方。あたしのバッグを奪ったのは、あんたらだ。
 なのに被害者ぶるってどういうこと。
 困惑しているうちに、どんどん人が集まってくる。
 ちょっとちょっと。あたしのバッグどうなった?

「立てますか」

 目の前に立った男が、あたしを見下ろしてくる。デカい。
 ざっと見上げてみて、ええと、一九〇近くあるだろうか。
 そこそこ肌寒い秋夜に半袖のシャツ。何者。
 細身ながらに結構体格がいいな。鍛えてますって感じ。
 年は……二十歳そこそこ?
 キャップを被っていてよくわからないけど髪はかなり短め。野球部みたい。

「交番まで付き添いましょうか」
「え、は、あたしの鞄……は?」
「無事です」

 目の前にバッグが差し出され、安堵する。

「どうも、ありがとう。……犯人は?」
「あっちでのびてます」

 これが、あたしと大地(だいち)くんの出会いだった。

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