オオカミさんはウサギちゃんを愛でたい。

 なに、いきなりヤる気だしてんの。

「あたし。帰りたいんだけど」
「自ら口にした言葉に責任を持ったらどうですか」
「セキニン……って」
「散々煽っておいて、冗談でした――なんて。これまでがどうであれ。この先、通用しないと思っておいた方がいい」

 これ以上、苦しい想いをしたくない。
 傷つきたくない。
 
「本当に帰りたいなら。助けて、と。叫んでもいいんですよ」

 だけど帰りたくなんて、ないよ。

「この手を離して欲しいですか」

 いやだ。

「今すぐ。離しましょうか」
「……っ、いや!」

 ――――愛されたい

 初めて心から好きになれた人に、あたしのこと、見て欲しい。

「離しちゃ。やだぁ」

 もっと大地くんと一緒にいたい。
 大地くんに受け入れられたい。
 あたしのこと求めて欲しい。

 本気が無理なら形だけでも、いい。
 大地くんとなら。
 一回限りでも大地くんに女の子としてみてもらえるなら、それでもいいよ。

 最後に、思い出ちょうだい。
< 39 / 201 >

この作品をシェア

pagetop