オオカミさんはウサギちゃんを愛でたい。
「なんだ。じゃあ美香のタイプでは、ないねえ」
「そうなんだけど」
「あれ。あれれ。気になるのー?」

 友人の若菜(わかな)が、ニタァと笑みを浮かべる。

「カッコよく助けられて。コロッと落ちた?」

 そんなんじゃ、ない。

「助けてくれたお礼が。したかったの」
「そうだね。うん。それで?」
「……れた」
「え?」
「断られちゃったの!」
「わお。美香に誘われて断る男いるんだ。というか、あんたから誘うってレアすぎない?」
「『ジブン、門限があるので』――って」
「は?……門限? なにそれ」
「そのまんま」
「え、待って。いくつ?」
「25」
「8つ上で門限? あは。ウケる」
「笑ってる場合じゃないし」

 なんなの、あたし、ママンに負けたの?

「連絡先は。交換できた?」
「うん」
「さすが美香、抜かりない。でも。そのわりには浮かない表情してない?」
「……あたしから聞いた」
「へえ。いつもなら男の方から美香の連絡先、知りたがるのにねえ」

 彼は、飢えたケモノではないらしい。

「『当然のことしただけです。お礼なんていりません』って断られたけど、粘って教えてもらった」
「美香がそこまでするとか。……さてはガチで惚れちゃったな?」
「そうなのかな」
「そう見えるけど」
< 4 / 201 >

この作品をシェア

pagetop