オオカミさんはウサギちゃんを愛でたい。
#05 お泊まり

 #04 お泊まり


「いらっしゃーい」

 入ったのは、どうみても初デートのシメに選ぶ店ではない。
 あたしみたいな高校生は来なさそうな、地元のオジサンが仕事帰りに通う雰囲気の食堂。
 というか居酒屋……?

 カウンターから女性が声をかけてくる。

「って、え、大地?」

 ――――!

「あんたねえ。全然連絡よこさない……で」

 どうやら大地くんの知り合いのようだ。
 それも名前を呼び捨てにするくらいには親しいらしい。

 エプロン姿の女性が、あたしを、まじまじと見る。

「誰」

 こっちの台詞ですけど。

「まさか。大地の、カノジョ?」

 か、彼女じゃないです。でも。
 未来ではそうなっているといいなと思います。

「えーと。大学生?」
「いや高校生」
「は?」
「今日。コイツ泊めてやるから」

 ――"泊めてやる"

「美香。こっち」
< 73 / 201 >

この作品をシェア

pagetop