わかりきったことだけを、
「なぁ浅岡」
ペンを置いた志葉が右手で頬杖を付いた。
不意に向けられた視線が交わる。志葉が頬杖を付いて私を見ているそのフォルムは、わりと好きだ。
「なんだい志葉くん」
同じようにペンを置き、私は左手で頬杖を付いた。
志葉の真似をして向かい合い、わざと くん付けをして彼にそう返すのも、わりと定着しつつある。
「補習免除になったら、俺にご褒美ちょうだい」
「欲しがりだなぁ志葉」
「人の放課後散々奪っておいてよく言うわ」
「それは志葉の本望でもあったじゃん」
「俺の好意をネタにしないで浅岡」
補習が免除になったらハッピーサマーバケーション。
補習が免除になったら、志葉にご褒美をあげる。
志葉が欲しがってるご褒美は、
「花火大会」
「ん」
「一緒に行こ、浅岡」
うん、まあ、悪くない。
「志葉、そういうの好きなんだ」
「そういうのってなんだよ」
「花火とかさ。志葉はロマンチックとか知らないんだと思ってた。告白だって急だったし、タイミングもよく分かんなかった」
「その話はもういいって。それに花火大会には男のロマンも詰まってんの、わかる?」
浴衣に花火に好きな人。
うん、わかる。
花火大会は男女問わずロマンと夢が詰まってる。