神様、どうか…
桜散る…高校2年の春…

壱 神様の決定

「また断ったのかよ〜」

「うるさいな。嫌なんだまとわりつかれんのは。」

「だって告られたのバレー部エースの美人、七桜紗里だろ〜?」

「そうだっけか。興味なさ過ぎて忘れたぜ。」

「またまた〜そう言ってこの学校全生徒の部活、係、役割、関係、名前全部覚えてるくせに〜」

「そんなの普通だ。逆によく覚えないで毎日生活をできてるな。」

「いやいやお前がおかしいんだからね?」

「なんだと?」

「あ〜ハイハイ喧嘩するつもりは無いよ。」

「ふん。」

「なあなあ、神って信じるか?」

「いや。」

「いやって…即答だな。」

「当たり前だ。あんな非科学的なもの。第一、俺達は元は仏教徒だ。仏には祈ったことがあるが、神には祈ったことが無い。」

「うわ、理論型めんどー。でもさーお前の名字神世じゃん。」

「変えられるなら即刻変えたいもんだ。自分の名字は嫌いだ。」

「でもさー壱の弐の佐藤くんキリスト教徒で教会で毎回祈ってたら車事故から救われたって言ってたよ〜?」

「くだらないな偶然だろ」

「ホントにそう思うか〜?まあ、俺も詳しくは信じてないけどねー」

「フン。」

(ガララ)
「ほら、お前らー席に着けー」

「お、もうそんな時間か。じゃ、席つくわ。輝。」

「ああ。」

(ドクンッ…)

“ひ……る……か……る…”

「輝!」

(ハッ!)

「大丈夫か?汗凄いぞ?」

(ハァー、ハァー…)
「あ、ああ。問題ない。」

「おい!神世!貴様、この問題は終わったのか?」

「はい。問題なく。」

(ガタッ)

「あー。立たんでいい。座れ。」

「…はい。」

「まじかよ、お前、早すぎねぇか?」
「そうか?簡単だろ。」

(キーン、コーン、カーン、コーン。)

(………)

「おい!輝!またボーッしてるぞ!」

「あ、ああ。すまない。」

「お前、大丈夫か?ちょっと休んだらどうだ?」

「いや、問題ない。」
(……なんだ…この胸騒ぎ…)

(キーン、コーン、カーン、コーン。)

「おっしゃ!下校だ!疲れたー!」

「……」

「……あ!そうだ!輝!カラオケ行こうぜ!カラオケ!」

「断る。」

「えぇ…。」

「それじゃあな。」

「ちえっ、つれねーやつー」

(ガチャッ)
「ただいまー。」

「おかえり。輝。今日はどうする?お風呂?ご飯?そ、れ、と、も〜?」

「やめろ。親子だぞ。」

「あれ?まだなーんも、言ってないんだけどなぁー?」

(ウゼェ…)
「あーもう、風呂入ってくるよ。」

「行ってらっしゃいー!」

(……)

「聞いてる?輝。」

「ん、ああ、聞いてるよ。」

「それでさ!お父さんがこう言ったのよ!“俺の白馬になってください。”って!」

「あーはいはい。」

「えー、つーめーたーいー」

「だってそれ何回目だよ。耳が炎症起こすくらい聞いたわ。それに、その言葉めっちゃ意味わからんし。」

「えー。なんでよー。お母さんのお話聞いてよー。」

「母さん。父さんは今日、いつ帰ってくるんだ?」

「ん?もーすぐだと思うよ。」

(ガチャッ)
「ただいまー。」

「あなた。おかえりなさい。ご飯できてるわよー。」

「ああ。いただくよ。」

「父さん。おかえり。」

「ああ。輝。ただいま。」

「ちょっと、聞いてよー。パパのカッコイイお話してたらね、輝ったら、興味なさそうに聞くのよー。」

「それはけしからんな。ほら、パパはカッコイイんだぞ?ホレホレ!」

「ポヨンポヨンじゃねぇか!説得力皆無だよ!」

「何を?まだまだいけるぞ?」

「あら、じゃあ今夜…」

「やめろ。子供の前だぞ。」

「あら、まだ何とは言ってないわよ?」

「言ってないなぁ。」

「くっ…このっ…」

「ワッハッハ!輝!最近、学校どうだ?」

「ん、別に。学年一位不動。体力測定オール10。」

「違う違う、彼女だよ!かーのーじょ!」

「彼女?つい今日、高校からの告白回数合計、117回目を記録し、117回目の断りをしたところだよ。」

「やーっぱ、勿体無いよなぁ!イケメンなのに!ジャニーズ申請こっそりしちゃおっかな!」

「やめろ。言ってる時点でこっそりじゃないし。」

「もうそれならしておいたわよ!」

「ふざけんな。」

「よし!流石我が妻!」

「トーゼンよ!」

「はぁ…まったくこの人らは…」



「おやすみ。父さん。母さん。」

「おやすみ!愛すべき可愛い天使ちゃん!」

「おやすみ!愛すべき我が息子よ!」

(まったく…疲れる…)



(ガラガラ…)

「お!輝!おっはよー!」

「ああ。おはよう。天下。」

「なあ、なあ、やっぱさ、1年の碧って子可愛くない?」

「そうか。頑張れよ。」

「はぁ?!冷めてんなぁー。これが本当の朝冷えってやつか?!」

「確かにおかしいな。もう夏なのに一気に冷えた。なぜだろう。」

「ハッハッハ!褒めんなって!」

「ああ。褒めすぎたな。」

(キーン、コーン、カーン、コーン。)

「お前らー。座れー。」

(キーン、コーン、カーン、コーン。)

「今日も疲れたー!」

「……」

「輝!今日は?!」

「フフッ。ああ。たまにはご一緒してもいいかな?」

「お!よっしゃ!モチロンよ!」



「ほら!次!輝!」

「ああ。」

「先輩!頑張ってください!」

「ああ。」



「………。いや、ウマ過ぎだろっ!」

「そうか?普通だろ。」

「いや、よく見て!95点!頭おかしいんか!」

「先輩、すごい………!」

「まあ、ありがとう。飲み物取ってくる。」

「いってら!おっしゃ!俺の番!」

「わ、私も行ってきます!」

「おう!おし!みんな!盛り上げてくれ!」

「はい!先輩!」

「いくぜ!メタロッk…」



「あ、あの!先輩!」

「どうした?お腹痛いか?トイレならすぐ隣…」

「違います!」

「……なんだ?確か、1年の碧だったな…なんか用か?」

「!名前…ありがとうございます…」

「用件は?」

「あ、あの、今度、二人きりで来ませんか?カラオケじゃなくてもいいんで!」

「…………考えとく。」

「あ、ありがとうございます!それでは!」

ーー

(ふぅー…疲れた…ゆっくり休もうか…)

(ドクンッ…)

「うっ…なんだ…?胸が…早く帰らなきゃ…」

(ガチャッ)
「ただいまー。」

(シーン…)

「?母さん?」

(!)

「母さん?!どうしたんだ?!」

母が泣いていた。

「輝…お父さん、死んじゃった…」

「えっ!?な、なんで?!」

「仕事先で…鉄骨が落ちてきて…即死だったって…」

「そ、そんな…」

「ねぇ…輝。私、どうすればいいの?もう…私…」

「そんな事言わないで!俺がいる!俺が母さんを全力でサポートする!絶対母さんを負担なんてさせない!」

「そうよね…輝がいる…その分、私が頑張らなくっちゃ!少し大変かもしれないけど、私があなたを不自由になんてさせないわ!」

「うん。ありがとう。母さん。」

親子で抱き合う。簡単には感じられなかった。それは、美しく、熱い、熱い、ハグだった。

ー数日後

「行ってきます!」

「行ってらっしゃい!頑張ってね!」

(ガララッ…)
「天下、おはよう。」

「お!輝!今日も元気だな!おはよう!」

(キーン、コーン、カーン、コーン。)

「ヨッシャー!終わりぃー!今日はどうだ?輝。」

「ああ。残念だが、遠慮させてもらうよ。」

「輝!帰るよ!」

「愛しい人が待っているんだ。」

「おう!行ってこい!」

「ああ。ごめんな。」

「ほら!早く!」



「碧。また一緒にカラオケ行こうな。」

「うん!待ってる!今忙しいの分かってるから!」

「うん。バイバイ。」

「バイバイ。」

(♡)

なんとなく、そのキスは輝かしかったと思う。

(ガチャッ)
「ただいまー。」

(シーン…)

「母さん?おいおい、流石にあの頃の真似事は笑えないぞ、おちょくるのもいい加減にしてくれ。」
「…?母さん?母さん!」

目の前には倒れている母がいた。
すぐに警察、救急車が駆けつけた。



「強盗殺人事件と見られます。」

「そ、そんな…殺人って…母は!死んだんですか!」

「残念ながら…」

「そ、そんな…父さんだけじゃなくて…母さんまで…そんな…」

「落ち着いてください。」

「ゔわぁー!」

泣き続けた。何日も学校には行かなかった。癒えそうにはなかった。でも、いつまでもではダメだった。

(ガララッ…)
「天下、おはよう。」

「お!何かと元気そうで何よりだ!」

「ああ。いつまでもへこたれてなんていられないからな。」

「ああ。今日も頑張ろう。」

(キーン、コーン、カーン、コーン。)

「終わったー!おし!じゃあな!輝!」

「え?ああ。」
(なんだ、今日は誘ってこないのか…気を使ってくれてるのか…)
「俺も帰るか。碧が来ないな。まあ、たまには一人でってのもいいかな。」

ー階段

(大分勉強に遅れが出たな…まあ、なんとかなるか…)

「ちょっ…ダメッ…こんなトコでやったらバレちゃうよぉ〜」

「いいじゃん!我慢できない!」

「もう!ダメったら〜…」

(カップルでこんな所で…迷惑極まりないな…)

それは、見ないほうがよかったのかもしれない。聞かなかったほうがよかったのかもしれない。一瞬だけ、鑑真や、ベートーヴェンを羨んだ。

(!あ、あれは…天下と…碧…?)

考えたくなかった。気づかれないようにそおーっと逃げた。

ー屋上

あゝ。だめだ。もう何も残っていない。俺には…親友も…家族も…恋人も…こんな人生、何が楽しいんだろう…もう…もう…

「終わりにするか。」

ゆっくりと、柵に手をかけ、飛び越えた。

「まあ、いい夢だったと思って、来世に持ち越そう。」

ゆっくりと前に…前に…
その時、

「それはまだ早いかな。」

(!)

信じられない光景だ。いつの間に羽が生えたのだろう。宙に浮いている。上を見上げると、白い天使のようなものが自分を持ち上げていた。

「な、なんだこれぇえええ!」

「ああ、騒ぐと落ちるぞ。」

「お、お前、誰だ!」

「はいはい。上に行ってからだね。」



「ハァー、ハァー…」

「まだ早いかな。それは。」

「なんだお前は。一体誰なんだ?」

「僕?僕は…そうだなぁ…君らで言う、天使とでも名乗っておこう。」

「て、天使?!ひ、非科学的だ!」

「そうかい。まあ、勝手にしてくれ。」

「…何故止めた。」

「死なれちゃ、困るからね。」

「何故だ!俺にはもう、何も残っていない!頼むから死なせてくれ…!苦しいんだ…!」

「嫌だね。君にはやってもらう事がある。」

「やってもらう事?」

「単刀直入に言う。狂った神様を一緒に止めてくれ。」

「何?狂った?だと?」

「ああ。ここ最近、不幸続き。何も残されてない。だろ?」

「なぜ…それを…」

「それは狂った神様がおこしたことなんだ。神様はこの世の未来を決定する権利があるが、ある事が引き金となり、ある日突然、狂ってしまった。」

「ある事ってなんだ?」

「それは…言えない…」

「…なんで俺なんだ?」

「それは、君がこの世の中で唯一、狂った神様に対抗する力を持っているからだ。」

「フッ非科学的だ。信じられん。そもそも神様という存在自体も信じていない。」

「なんだと?」

「悪いが乗れないな。だが、何故か生きれた。これは何か意味があるのかもしれない。俺の周りには天使なんて見当たらないがな。」

「そうか。」

「家に帰るか。」

なんとなく、分かった。
終わりの、始まりだと。
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