イケメン従者とおぶた姫。
ミオは、決意していた。


…これは、自分の賭けだ。

それ次第で、今後のこの旅について考え決断しようと考えていたのだ。


夜、みんなが各自のテントの中で休んでいた時を見計らい、意を決してその人物の元へと向かった。


「…今、大丈夫かしら?」


テントの前でヒソヒソ控えめな声で声を掛けた。

テントに入る前、事前に声を掛けていたので
その人物はすぐに出て来た。


そして、テントから少し離れた場所の川辺へとやってきた。



「…で、話ってなんだよ。」



ゴウランは、木に寄りかかり不機嫌そうに
ミオに尋ねた。

ゴウランのすぐ隣のテントでは、ヨウコウとミミがお楽しみ中で、
いくら音を立てないようにしていても、
テントは薄っぺらい布な為すぐ隣のゴウランの耳に嫌でも二人の情事の物音や漏れ出す声が生々しく聞こえる。

今は旅人。商工王国から出ていて商工王国の法律は関係ない立場なので、ヨウコウやミミはそれをいい事に旅中ヤりまくっている。
もちろん、自分もミミとヤっちゃいるが…
たまに、三人でする事もあるし。

王子優先だから、いくら自分がもの凄いムラムラしていてもミミを取られてしまう。

ムラムラしすぎて、ミオを誘った事も寝込みを襲った事もあるが返り討ちにされて痛い目にあった。

ヨウコウに関しては、いくら王子と言えど
無理矢理は大きな犯罪で話が変わってくるので上に報告するとミオが言ってからヨウコウは、ミオに一切手を出そうとはしなかった。


しかし…すごく面白くない。自分だってヤりたいのに!そりゃ、機嫌も悪くなるってもんだ。


何となく、ゴウランの不機嫌な理由を察したミオは内心とても呆れて深いため息を吐きたくなっていた。

だって、自分もヨウコウの近くにテントを張っていてソレの音や声が聞こえていたし
ゴウランのテントの前に来た時なんて、まる聞こえだったから。

おそらく、結構離れた場所にいても訓練されて耳もいいはずの彼らにも聞こえているに違いない。

それは、さて置き。

こんな奴に、大事な話をしようとしている
自分の判断が間違えているのかと思ってしまう。

ただ、少しの希望を込めて話を始める。



「…今日、色々あってダイヤさん達と一緒に
行動を共にしてるんだけど。…どう、思った?」


そう、ミオが尋ねると



「…どう思ったって、どういう事だ?」


ゴウランは、首を傾げミオを見てきた。



「まずは、私達、ダイヤさん達、コウ姫様達のメンバー構成。
今日、話にも出てたけど、おかしいと思わない?」


そう聞いてくるミオに


「…はあ。それは、ヨウコウ様が
王位順位一位で大切な人だからだろ。
それは、お前も分かってんだろが。」


なにを今更とでも言いたげにゴウランは、
面倒臭そうに声を出してきた。


「…本当に?」


「……は?」


「本気で、そう思ってる?」


「…何が、言いたいんだ?」


ゴウランは、ミオの問い掛けを不信に思い聞いた。すると


「よく、思い出して考えてみて。
私達が、旅に出る前の説明を。

最初説明されたのは
“とてもダメダメな一般人と旅をする事になる。本当に何もできないダメ人間で、旅の迷惑を軽減させる為に特別に一般人の世話をさせる為のメイドを用する。ショウと王子の
メイドだ”と。」


ミオの説明に、あれ?そうだっけ?
そういえば、そんな感じだったなとゴウランは薄っすらではあるが思い出していた。


「だから、ショウは手違いでも何でもない
しっかり選考を通ってきた一般人って事になるわ。」


それを聞いてゴウランは、確かにそうだと気がついたようで大きく目を見開きミオを見てきた。


「もっと、思い出してみて。
もし、ヨウコウ様が王位順位一位で特別扱いされてるってなら“失格”なんてあり得ないと思わない?」


「…いや!だが、それはヨウコウ様が特別だから旅の復活を許されたんじゃないか?」


「…そうとも考えられなくはないけど。
それにしたって、何かが引っかかるのよ。
じゃあ、何故あの時あっさりと失格を言い渡されたの?

旅に戻れる事になったのだって、何のきっかけも何もない状態でいきなり旅の許可が許されたのよ?」


実は、それはゴウランも少し気になっていたところだった。

旅を許すにしても…全く説明がなかった。
何の説明もなく旅が再度始まったのだ。
それに、少し疑問を感じつつヨウコウが
特別だからだと自分に言い聞かせていた部分もある。


「それに、シルバーやオブシディアンの事。
特にオブシディアンは、あなたに言いかけた言葉があったわよね?
“特に、ゴウラン…お前なんて…”何か、
あなたの弱みを知ってる風だった。
…いえ、私達の知らない様々な情報を知っている風に感じたわ。」


…自分の弱みだと?
あの時、オブシディアンは自分に何を言いかけたのだろうか?ハッタリな気がしないでもないが、ミオが警戒しているのでハッタリと思いつつ気になってしまう。


「そして、一番疑問を感じたのが騎士団長様の言葉。

最初旅をする時、ショウの説明はしっかり
ダメ人間と説明されてた。説明するからには、向こうも“しっかり分かった上で旅のメンバーに選んだ”はずなのに

騎士団長様は
“何かの手違いで選考を通ってしまった”と、説明してきた。

最初は、ヨウコウ様とショウの為のメイドだったのに
“いつもと変わりなくミミは、ヨウコウとゴウランの世話をしろ”“ミミは変わらず、ヨウコウとゴウランの専属メイド”に、変わってた。

…ねえ、これって…」


と、そこまでミオが言った所で、ゴウランの顔はサー…っと青くなっていった。

つまりは、自分とヨウコウはミミと体の関係がある事を知っていて“変わらず、ヨウコウとゴウランの世話をしろ”…二人のシモの世話をしろという事。

ミミはショウとヨウコウのメイドであったはずだが、ショウの世話をしなくなり、
挙句、自分達と一緒になって主人である
ショウを嘲る…

メイドとして、あるまじき姿だ。

騎士団長から命じられたミミの仕事内容。
最初こそヨウコウ様なら分かるが
何故、自分まで?と、一瞬疑問に思うも
それ以上深く考える事はなかった。

今、よくよく考えてみれば…

それは、護衛としてのゴウランに対し失望し呆れ見放そうという意味なのではないだろうか?
どうでもいい存在だから、護衛でありながらメイドに世話を…これって…

明らかに、馬鹿にされた言葉だ。

本来なら、騎士団長に言われた時点で気がつかなければならない事だったのかもしれない。

忘れてしまいがちだが、これは試験なのだ。
いかなる時も、気を抜いてはいけないはずだったのだ。

それに、今の今まで気づかず、都合のいいように勝手に解釈し調子に乗っていたのだ自分は…!!

ミミに関しても、ショウのメイドをクビになったと考えておかしくない。


ゴウランは、羞恥でカッと顔を赤くし


「…こっちの情報が筒抜け…って、事か…?」


と、呟いた。
それに、ミオはコクリと頷く。


「それに、シルバーやオブシディアンは団長クラスの実力があるって言ってたけど。
それは、本当だと思う。それくらいに、あの
二人は圧倒的に強い…化け物だわ。

わざわざそんな凄い二人に、ショウなんかを守り世話をさせるなんて、おかし過ぎるにも程がある話よ!」


ゴウランは、今まで少し引っかかりはしなくはなかったが気にしないようにしていた。
ミオが喋れば喋るだけ、おかしい事だらけな事に気付かされる。



「…何より、おかしいのは王様の事よ。
王様は、血の繋がった王子や姫達を
自分の子供だと認めず、ただの王位継承者候補としか認識してないという話は有名だわ。

王子や姫の顔や年すらも知らない、気にも留めないって話もあるくらい。

現に、王子達は自分の戸籍に入れず
王の力を使って、王子達だけ特別に新たな
戸籍を作ったらしい話も聞いた事がある。

そんな突き放した存在を自分の子供だからって特別扱いすると思える?血の繋がった王子達を赤の他人と思ってる人が?」


それは、ゴウランも重々分かっていた。
城の選考により、ヨウコウの遊び相手に選ばれ一緒に過ごすようになって

ヨウコウの事情は嫌というほど見てきた。

一度もまともに王に会った事なんてない。

偶然に王宮のどこかですれ違ってもヨウコウは部下同様、頭を深々下げ王が通り過ぎるのを待つのみ。

王は、ヨウコウを他の部下同様に扱いチラリともこちらを見る気配すらない。

赤の他人だと、むざむざと思い知らせる態度だ。

確か、その当時
将来が約束されるほど優秀な王子がいたが
不祥事を起こし罰せられる事件があった。

それは、王の一言で揉み消せる程度の軽いものだったらしいが、王は一切関与せず。


“何故、赤の他人の手助けをせねばならぬのだ。”


の一言で、一般市民と同様な罰が下され
そんな奴は将来、王としての見込みは微塵も感じられないと王子の地位を剥奪したと聞いた事がある。

それも、過去5名ほど罰せられ地位を剥奪され一般市民に落とされた王子と姫がいるらしい噂もある。


「それに、王はどんな相手でも容赦なく厳しい判断をなさる方よ?そんな方が、依怙贔屓するなんて考えられない。」


ミオのその言葉に、ゴウランは雷に打たれたような衝撃を受けた。

…そんな事、ヨウコウを間近で見てきた自分が嫌というほど知っていたはずの事じゃないか!ヨウコウだって、それに対し酷く傷つき悩み苦しんでいたではないか。

なのに、何故ヨウコウが“特別”だからと思い込んでしまったのか。

痛いほど、分かっていた事だったのに。


ゴウランの様子を見て、ミオは


「…それに、今更だけど。
ヨウコウ様とあなた達の行動はあまりに目に余るわ。」


そう、言ってきた。


「…なっ!!?」


「…もちろん、私も…」


そう言って、俯くミオ。


「…ねぇ、今まで私達がショウにどんな態度をとっていたのか思い返してみて?」


そう言われ、ゴウランは


「それが何だっていうんだ?」


と、なんて事のないように聞いてきた。


「ショウは、私達と違って何の力もない
一般市民よ?私達は、軍人だったり時期王候補だったりして、それに合わせて心も体も鍛えてる。けど、ショウは違う。
……ましてや、一般のただの小学生よ?
まだ、子どもなのよ?」



その言葉に、ゴウランは大きく目を見開き目を泳がせると、何かを思いついたように


「…そ、それを言うなら、ヨウコウ様だって
まだ14才の子供だ!」


そう、言ってみたが


「確かに、ヨウコウ様も子どもだけど。
全然、立場が違うわ。

それに、小学生と中学生じゃ全然わけも違ってくる。」


ゴウランは、まるで説教されてる気持ちがして物凄く居心地が悪く
早くこの場から立ち去りたい気持ちになっていた。


「…そんな一般人の子供に、私達は何をしたと思う?」


ミオの問い掛けに、ゴウランは目を泳がせ俯いた。


「身分の違いで、自分と同じ人間を虐げていいの?どんな風に扱っても許されるものなの?

それに、今は試験の為に身分がない状態なのよ?ヨウコウ様もあなたも私も、
今は一般市民。試験で、そういう規則を作ったのにも、何か意図がある筈だわ!

ビーストキングダム国王のあの言葉も。
“それが、お前の理想とする国か”

ねぇ、どういう意味だと思う?」



そう、問われ

ゴウランは、酷く動揺していた。


「…お前達は、知らないからそんな事言えるんだ。ヨウコウ様の苦悩や葛藤…」


そう話し始めるゴウランに


「…そんなの!理由はそれぞれ違って大小はあっても、みんな色々抱えて生きてるわ!
私だって、そう。
なんなら、今はショウがそれを強く感じてる筈だわ!しかも、抱えてる事は大きいわ!
自分達だけなんて甘ったれた事言わないで!!」


ミオは、ガツンと言った。
何があったか分からないけど、それを弱い者に八つ当たりするのはお門違いもいい所であると。


「…ねぇ、自分より劣ってる人間を嘲笑って
蔑ろにして、イジメて…酷い扱いして…。
そんな事って許されるの?王子様と将官の息子だから?」


「…う、うるさいっっ!!黙れっ!!!」


ゴウランは、もう何も言い返せず
ミオを怒鳴りつけると自分のテントへと戻って行った。


…最悪だ、最悪だ、最悪だっ!!!


いいなぁ、可愛いなぁと、淡い恋心を抱いたミミは、今はヨウコウとお楽しみ中だし

ミオに呼び出された時は、告白かと小さな期待をして来てみれば、こんな知りたくもなかった話を聞かされるし。


マジで、今日は散々な日だ!


と、テントに向かおうとすると

森の奥で、ガッガッ!ダンッッ!!と、何かを叩く音と人の会話が聞こえる。

なんか気になって、そこの方向に向かって行くと二人?三人くらいの男の声がしてくる。

ゴウランはバレないように、こっそり近づき
音のする方へと行ってみると


「……え……!?」


その光景に思わず驚きの声が漏れる。

そこには、ダイヤ王子、シュリ、ガブがいて
武器術と体術を交えた実戦練習をしている。

ダイヤ王子は、シュリに負かされると
腕立てやスクワットなど基礎トレーニングをしている。

どうやら、負けたらペナルティーがつくシステムらしい。

シュリとガブは、相手が王子でも容赦はなく厳しく指導していた。
見ていても、未だかつて自分はこんなハードな練習をした事があっただろうかと思うほど、見ているだけでも嫌になるくらいの厳しい練習だった。


「…え〜?もう、へばっちゃうわけぇ?
ダイヤ、弱すぎるぅ〜!
そんなんで、国守るとかちゃんちゃらおかしくて屁がでそぉ〜!」


と、汗だくでへばり地面に伏してるダイヤにシュリがそう言って笑っていると


「…クッソ!まだまだ!…頼むぜっ!!」


ダイヤは、ヘロヘロな体を叱咤し立ち上がり練習をする。ようやく立ち上がっても、体力の限界で足がガクガクわらっている。
しかし、弱音や妥協は一切ない。

そして、ダイヤがようやく立ち上がった所で


「よし。今日は、そこまでだ。」


と、言うガブの声。それでも、ダイヤはまだまだ練習をすると喚いていたが


「体を休めるのも練習のうちだ。」


ガブはダイヤの頭にポンと手を乗せニッコリ笑っていた。
ダイヤは、まだまだ練習したりないとブスくれていたが。シュリは


「あ〜、ヤダヤダ。この練習バカに付き合ってたら、こっちの体力がなくなっちゃうぅ。
明日の旅でぇ途中でへばっちゃったら、どーしてくれんのぉ〜?」


ブツクサ言っていたが、どこか嬉しそうに見える。そこで


「練習が終わった。待たせたな。」


ガブは誰かに声を掛けていた。

気が付かなかったが、ガブから少し離れた場所にハルクは座っていた。熱心にアプリ携帯の機能を使い薬草学のデータを引っ張り出し勉強をしていた。


ドクン、ドクン、ドクン…!


怪我もしているのに。旅の途中なのに…あんなにハードな練習をしている。

ゴウランは、その光景に愕然としていた。

ただでさえ、旅で疲れるというのに…。努力を惜しまず、物事に取り組む姿に衝撃をうけゴウランは今までの自分達の行動と比較してしまった。

自分達は、旅で歩き疲れるからと練習をしていなかった。いや、旅をするからと練習の事はたいして頭になかった。
旅をしたら、自然と強くなるだろうと思っていた。実際、魔物の遭遇や戦いなどで当初とは比べ物にならないくらいに強くなったと思う。

けれど、ダイヤ達の努力する姿を見ると
なんだか、とても恥ずかしい気持ちになってくる。自分達がとても小さな人間に思えてくる。

ダイヤ達が、少しの時間の隙間を見つけては努力している時に、自分とヨウコウは…休んでいるかミミとヤってるかだ。
…いや、娯楽施設がない所では暇さえあればミミとヤッてばかりいた気がする。

街に出れば、持ってる所持金で使える金額を決めてだが遊びに出掛けていた。ショウにかかる予算を使って…。

そうでなければ、用意された予算内だけでは遊びに行くお金がないのだ。

だから、無能で何の役にも立たないショウに
お金を使わないようにし、その金で遊んでいたし少し贅沢な食事を食べていた。


…冷静に思い返すと、自分達は一体何をやってるんだと恥ずかしく居た堪れない気持ちが込み上げてくる。

あまりの自分達のダメさっぷりをむざむざと思い知らされた気持ちになり、惨めな気持ちになりながらさっきと違う道を選び川沿いを歩きテントに向かっていた。


すると…



ぱちゃぱちゃ


水の音と、人の話し声が聞こえた。

なんだろう?と、こっそり近づいてみると


…ドキッ!


情事の後で体が酷く汚れたのだろう。
ヨウコウとミミが、水浴びをしていた。

ミミは、嬉しそうにヨウコウの体を丁寧に洗ってあげている。

その途中で、ヨウコウがミミに触れ二人はキャッキャと戯れながら
だんだん、そういう流れになりおっぱじめていた。


「…ミミ、ゴウランはお前に惚れてるっぽいぞ?」


息を荒げながら、ヨウコウはミミにそう言うと


「…あんっ!え〜?でもぉ、ヨウコウ様の方が、カッコいいし…その…相性もいいし…」


盛大に、あんあん喘ぎながら、そう言ってるミミの言葉に覚えがある。

この言葉…自分にも言っていたと。


その時の自分とミミの会話を思い出す。


“…ミミは、俺とヨウコウ様どっちがいいんだ?”


“…そんな事聞いちゃうんですかぁ?
もう、イジワル!…ヨウコウ様にはぁ、内緒ですよ?ゴウラン様の方が断然ステキです!
…恥ずかしいけど…体の相性もいいし…”


そんな事を言っていた。

それも、不安に感じた時、優越を感じたい時、自分はよくこんな質問をし
その度に、ミミはヨウコウ様なんかより
ずっとずっとゴウラン様の方がいいと言ってくれていた。

だから、その気になっていた。
ミミは、ヨウコウ様には気がない。自分の方に気があるのだと。

ヨウコウ様と体の関係があるのは、相手は
王子。身分の違いで逆らう事ができず泣く泣く従ってるだけだと思っていた。


…しかし、それは自分の勝手な妄想に過ぎなかったと知った。

それに、ヨウコウのあの言葉…

ゴウランがミミを好きだって知りつつ手を出しているという事になる。しかも、それを
面白おかしそうに話していた。

なんか、酷く裏切られた気持ちになり、
ヨウコウに対し初めて嫌悪を感じたし、憎く感じた。


…信じていたのに…


ガラスを割ったかのように、ガシャーン!と、ハートが割れバラバラと砕けていくような感覚に陥った。

…それから、どうやってテントまで戻ったか覚えていない。

気がついたら、テントの中に居て座って
ただただ、ボーッとしていた。

涙すら出てこない。

ここで、泣けたらまだスッキリしていたかもしれない。

だが、泣く事も出来ずショックを受けるだけ受けズーンと落ち込んでいた。


嫌でも、今日起きた大きな出来事が頭の中に蘇ってくる。

ミオの話、ダイヤ王子達の姿…ミミの事。


…ああ、今日はなんて最低最悪な日なんだ。


< 28 / 120 >

この作品をシェア

pagetop