イケメン従者とおぶた姫。
一行が各自自分達の部屋で休んでいる時。

各部屋では、先ほどの可哀想な少年の話題で溢れている中、別の話題を話してる者達がいた。



「なーんか、妙なんだよな。
シルバーとオブシディアン。」


ダイヤは、ベッドに座り頭の後ろに手を回しながら自分がおかしく思った事をメンバーに話していた。


「まー、それはオレも感じたァ〜。
二人してさァ、“過ぎるほど”色々優秀なんだけど。知識とか実力はあっても、実戦は初めて〜みたいな?な〜んか、ぎこちない所あるんだよねェ〜。

初めてなら当たり前さァ。けど、試験関係無しに国で雇うって事はガブみたいに、実力もあって更に経験も豊富な人材選ぶよねェ?
いくら、優秀だからって初心者とかァ、経験乏しい奴わざわざ選ぶとかあり得ないよねェ〜。」


シュリも、なーんか変なんだよねーと、ゴロリと横になりながら賛同する。


「…確かに、その通りだな。」


ガブも、二人の話を聞いて神妙な顔をした。
そこに、ダイヤは更に疑問を投げかける。


「あの二人が、メイドと用心棒ってのも引っかかるけどさ。特に、メイドな!
あの二人のショウちゃんに対する接し方が、スゲー引っ掛かったんだよな。
確かに、護衛か用心棒としてお手本のような仕事っぷりに見えるけど…なんて言うのかな?
ショウちゃんに対して距離感が妙に近いって言うのか…」


ダイヤが、その話に触れると机と睨めっこしながら、魔法学の勉強をしていたハルクが顔を上げ



「それ!自分も思ったッス!
ショウちゃんをお姫様を扱うみたいに優しくしたかと思えば、いきなり冷たく突き放す素振りを見せたり。
ショウちゃんを傷つけるとかじゃないんスけど、ショウちゃんを注意する時もの凄く厳しい事言ってたっス。そこまで言わなくていいんじゃないのってくらい。」



「そうなんだよな。あの二人、旅を続けると嫌な事がたくさんあるぞって忠告が凄いんだよな。
…まるで、ショウちゃんに早くリタイヤしてほしいみたいだ。」


「もはや、リタイヤするように誘導してるっスよね!」


ダイヤと、そうそう!オレも思った!みたいに、思った事をポンポン軽い調子で出し合っていた。

そこに



「…それも、そうだけどさァ。
ダイヤ、ショウちゃんの事、妹できて嬉しいって言ってたけど、どうしちゃったァ?
今まで旅続けてる中でも、色んな人と出会ってきて…それこそ、ショウちゃんよりずっと小さな子や誰にでも好かれそうな人懐っこい子だっていたのに、そんな事言った事もないじゃないさァ?」


シュリが不思議そうに、ダイヤを見てきた。

すると


「妹は妹さ!」


ダイヤは、ニカッと笑った。


「…え?それって、まさかの…まさかっスか?冗談っスよね?」


ハルクが、驚いた顔でダイヤを見ると満面の笑みで可愛いよな!なんて的外れな回答をしていた。



一方、ショウ達は

いつもの如く、微妙な雰囲気で部屋で過ごしていた。

オブシディアンは、自分とショウの荷物の整理や服の洗濯など準備を整えていて

シルバーは、自分の準備が済むと二人から少し距離を置いた場所で読書をしている。

みんな、会話するでもなくそれぞれの時間を過ごす。出会って、一週間は優に過ぎているが、未だ、ショウは二人に対し緊張しギクシャクしていた。


…し〜ん…


…居心地があまり良くない…

悪くもないが良くも無く…普通でも無く…


知り合って間もない三人が集まっているのだから仕方ないかもしれないが、それにしたって会話がない。シルバーもオブシディアンも会話をしようという気配すらない。

ショウは人見知り、普段のシルバーとオブシディアンは無口。そんな三人が集まった所で会話が弾む筈もない。

それに対し二人とも何ともないようだが、
ショウはその空気に慣れず一人ギスギスしている。

もう少し、何とかならないかなぁ〜と思う
ショウだ。


「…あ、あのね…」


ショウがどちらかにとでも無く声を掛けると、一斉に二人がショウを見てきた。


…ひ、ひぇ〜…


声が出るか出ないか程度の小さな声だったのに、声を出してみて気付かれないだろうなって思ったのに二人は俊敏に反応してきた事に内心ショウはビックリしてしまっていた。


『どうした?』

「何かありましたか?」


まさかの二人に声を掛けられ、ショウは驚きのあまりキョドってしまっていた。
だって、オブシディアンならまだ反応が返ってくるかな?来ないかな?程度に思ってたのに、オブシディアンどころかシルバーまで自分を気にしてくれたのだ。

期待してなかっただけに、こんな反応が返ってくるなんて予想外だったのだ。

二人して、こっちをジッと見るものだから、話しかけたはいいが恥ずかしくなっちゃってショウは真っ赤になりながら俯いてしまった。


すると、オブシディアンはショウの座っているベッドまできて、ショウの前で膝をつき目線を合わせ


『何か、言いたいのだろう?
どんな話だっていい。遠慮はいらない。』


と、言ってきてくれた。

なので、ショウは緊張はするけど萎縮する事なく口を開く事ができた。


「…今日、見た子なんだけど…どうにかして助けられないかな?」


ショウは、モジモジしながら話すと


『無理だ。』


と、速攻で返事が返ってきた。
あまりに早過ぎる回答だったのでショウはビックリして


「…え?どうして?
注意してもダメなの?」


そう、質問してきた。すると


『こちらがあの親と愛人に注意するだけで、あの子が助かるならみんなとっくに注意してる。けれど、そうはいかない。
注意したら、“お前のせいだ”と、理不尽な怒りを買いあの子の虐待は更に酷くなるばかりだ。
もし、下手に関わると、こっちまで被害が及ぶ可能性も高い。だから関わらないのが一番だ。

何より、ダイヤが警察に連絡を入れたようだ。それ以上こちらができる事はない。』


「…警察に連絡すれば、あの子は助かるの?幸せになれる?」


『助かるとは限らない。規約や人の見定め方により、条件も変わってくる。』


オブシディアンの助かるとは限らないと言う言葉に、ショウはトンカチで頭を殴られた衝撃を受けた。

注意してもダメ、警察に連絡しても絶対ではない…どうしようもないじゃないかと。
酷く、ショックを受けている様子のショウに


「ショウ様。世界中には、あのような人間がたくさん溢れ返っています。いくら可哀想だからと手を差し伸べてもキリが無いのです。」


シルバーは、涙を流すショウの隣に座り
ソッと自分の胸にショウを抱き寄せた。

その温かさに

ショウはごく自然に、シルバーの背中に手を回しシルバーに甘えるように胸にグリグリと顔を擦り付け


「…サクラ。」


と、思わず呟いた。

すると


「…サクラ?」


驚いたような声が聞こえ、上を見上げると


…ドキィィッ!!?


サクラとは全然違う顔が見え、ショウは
ぎゃぁぁーーー!!?
ま…間違えちゃったーーーーー!!!?と、顔を真っ赤にし


「…ひぇ!ま…間違えた!ごめんね!!」


と、焦りながら謝った。
つまり、アレと同じだ。学校で先生の事を間違えてお母さんと呼んじゃうアレと。

シルバーは、驚いた表情で目をパチクリさせている。


「…えっと…あの、違うの。
サクラと全然違うのに、サクラって思っちゃって…。…あ!サクラって言っても分からないよね!え〜っと…」


ショウが慌てて、サクラについて説明しようとしたら、言わなくて大丈夫とシルバーは、ショウのほっぺにソッと手を触れ

ショウの目線に顔を合わせると


「大丈夫です。間違える事は誰にだってあります。」


そう言って、優しく背中をポンポンと叩くとショウの側を離れて行った。


…あれ?

行っちゃった…

私が間違えちゃったせいで、気分悪くしちゃったのかな?


ショウは、しょんぼりしながら、
気になって隣のベッドで再度本を読み始めたシルバーをチラリと見た。

すると


『大丈夫。シルバーさんは少しばかり不器用な人らしい。ショウ様を嫌ってるとか、気分を害したなんて事はない。
…恥ずかしがり屋なのかな?』


ショウの気持ちを読み取ってか、オブシディアンはショウの目線の高さに合わせたまま
ヒソヒソと小声で話してくれた。


「…本当?嫌われてない?」


ショウは、シルバーに聞こえないようにオブシディアンの耳元に近づきヒソヒソ話した。

オブシディアンは、ショウの行動に少しばかり驚くも、ショウの顔を見てコクリと頷き大丈夫と笑った。


…そっか…そっかぁ!

私、シルバーさんに嫌われてなかったんだ!

てっきり、嫌われてるんだとばっかり思ってたけど、違うんだ。


なるほど。シルバーさんは、恥ずかしがり屋さんなんだ。

なのに、さっき私が泣いちゃった時、慰めてくれたんだ。

…優しいなぁ。

不器用なのに無理しちゃったのかな?

…もし、そうだとしたら…なんか、ちょっと
かわいいかも。


…きゅん!


ショウは、その事が嬉しくてこみ上げる喜びで笑いそうなのを堪えて、ほっぺを赤くしてクフクフ笑っていた。

それを、オブシディアンは


『おやおや、コレは…』


と、ショウに釣られて笑みが溢れていた。
そう思ったら、今度はオブシディアンを恥ずかしそうに見て


「…オブシディアンさんも?オブシディアンさんも、私の事嫌ってない?」


ショウは、少し不安気にオブシディアンに聞いてきた。

それには、オブシディアンは


『もちろん、嫌ってない。』


と、笑顔で返事をしてくれた。


どっきーん!


…嬉しいっ!


ショウは、まさかの返事に嬉しくて嬉しくて、思わず顔を下に俯かせ
嬉しくて出る笑いを懸命にプルプル体を震わせ堪えていた。

だって、こんな時に笑ってたら、おかしく思われると思ったから。

それに、ここにいるのがサクラだったら
嬉しさのあまり飛びついて嬉しいって言葉に出してクスクス笑っていただろう。

それができない今、嬉しい気持ちの表現を懸命に堪えるしかないのだ。

そんなショウに、オブシディアンも思わず笑みが溢れ治らずいた。


『そろそろ時間だ。お休み。』


オブシディアンが、ショウにその言葉を掛けた瞬間ショウはもの凄い眠気に襲われうつらうつらし始めた。

そんなショウに、オブシディアンは布団をめくって入るように促す。それに素直に従いショウは布団に入るなり


「…ふぁ〜…おやす…み…」


スヤァと、心地よさそうに眠りについた。
オブシディアンは、ショウに布団を掛けてあげると自分のベッドへ戻り横になった。


最近、いつもこうだ。オブシディアンに、お休みと声を掛けられると急激な眠気が襲ってくるのだ。それを我慢できず、気がつけば眠っていて…毎日、同じような夢を見るようになった。


…それは…


真っ白く何もない空間に、自分と今日使っているベッド…そして…サクラがいる。

いつも、そうだ。

眠りにつくと真っ白な空間に、その日使っていた寝具とサクラが現れる。


ベッドでは家にいた時、いつもサクラが
してくれたようにショウを抱き締め眠ってくれる。

ショウはサクラがいると思ったら、急に笑いがこみ上げてフフフッ!と笑ってしまった。

それに、気がついたサクラは


「何か、いい事がありましたか?」


と、指でショウの頬をなぞりながら優しい笑みを浮かべ聞いてきた。


「…あのね!今まで、シルバーさんに嫌われててるって思ってたんだけど。
今日ね、それが違うって事が分かったの!
シルバーさんもオブシディアンさんも、私の事嫌ってないんだって。
それが、とってもとっても嬉しかったの!」


ショウは、よほど嬉しかったのだろう。
頬をピンク色に染め目をキラキラさせながら
そう話すと嬉しくて嬉しくて、サクラの首に手を回しギュウっと抱きついてきた。

それを当然のように、サクラは受け止めソッとショウを抱きしめ返す。


「だから、言ったでしょう?二人共、ショウ様の事を嫌ってなんかいませんよ、と。」


サクラは、ほら、言った通りでしょう、と、クスクス笑っていた。

少し落ち着くと、あの虐待されていたコを思い出しシュンと落ち込んだ。サクラは、すぐにショウの変化に気付き


「どうしましたか?何か、嫌な事がありましたか?」


と、心配そうにショウの顔を覗き込んできた。


「…うん。今日ね、お母さんとお母さんの愛人って人にイジメられてたコがいたの。
もしかしたら、奴隷売りの人に売られちゃうかもしれないって聞いて…」


ショウが、悲しそうな顔でサクラを見ると
サクラは何も言わず、ショウを力いっぱい抱き締めてきた。

それは、自分達ではどうする事もできないという合図。ショウは助けてあげたいけど助けてあげられない自分が情けなくて悔しくて…いっぱいいっぱい泣いた。

サクラはショウの頬に手を触れると、涙の一粒一粒にキスをしていき


「…ショウ様が悲しいと私も悲しくなります。」


と、一粒の涙を零した。

ショウは、サクラの気持ちがとても温かくて、どうしてサクラはこんなに優しいの?優しくできるの?

いつも、ショウが悲しい時、辛い時
優しく抱き締めて“大丈夫ですよ。いつも、私が側にいます。”と、言って涙を流してくれるのだ。

こんなに優しくて、いつも人の気持ちばかり考えて…辛くないのかな?もっと、自分の事だけ考えてもいいのに。


私が、サクラを助けてあげられないのかな?


ショウは、サクラの頭を撫でてみた。

自分が入院した時、リュウキに撫でてもらった時、凄く安心したしホッとできた事を思い出したのだ。

サクラにも、リラックスしてほしかった。

サクラは、いつも頑張り過ぎなのだ。もっと、肩の力を抜いてほしいと思った。


「…サクラ、いいコいいコ。」


いつか、リュウキに言ってもらったように、ショウも真似してサクラに言ってみる。


すると、サクラは最初驚いた顔をしていたが、サクラの頭を撫でていたショウの手を取ると


…スリ…


ショウの手に頬ずりをして


…ちゅっ!


と、キスしてきた。


「…ショウ様、慰めて下さるのですか?
ショウ様は、とても優しい。…一緒にいて
とても心地がいい…」


サクラは、またショウの手に甘えるように
頬ずりしながらショウの顔をトロけた顔で見てきた。


…ドキィーーーーーッッッ!!?


…え?

なに、最近のサクラ…ちょっと変…

こんな顔、お家にいる時は見た事なかったよ?

こんな顔されたら…私…私…!



夢の中のサクラは、頼れる頼もしい存在から、仔猫か仔犬のように物凄く甘えたに変わってくる。…それが、とっても可愛いって思ってしまう自分はおかしいのだろうか?

とっても、キュンキュンしちゃう。



…ドッキンドッキン!



ショウは、サクラが妙に色っぽく見えて、
ドキドキが止まらず…体の奥がジンジンキュンキュン熱くなっちゃって、堪らずうっとりとサクラを見てしまっていた。


「…そんな顔で見られたら、我慢ができなくなってしまいます。…かわいい…」


サクラは、切なそうな表情をしてショウの顔に顔を近付けてきた。口が軽く開いているのは何故と思いつつ、ショウは自然と目を瞑り
サクラを待った。


…ドクンドクン…


…パク…!

…へ?

ショウの唇は、パクリとサクラの口の中に包まれ

ちゅぅ…

と、優しく吸ったまま

口を離すと

ちゅぷん

なんて、なんだか恥ずかしい音を立てていて
ショウは恥ずかしくて恥ずかしくて思わず目を開けてしまった。

すると、サクラは少し息を荒立てながら
ショウの口に、耳に、首筋…鎖骨と順番に吸い付くようなねっとりとしたキスをして

その度に、ショウはゾクゾクゥッ!と、体に得体の知れない甘い痺れが走り

堪らず、変な声が漏れてしまうし息も荒くなっちゃっている。体も勝手にピクピク動いちゃうし、自分の体がおかしくなったとサクラに訴えると

サクラは、おかしい事じゃない。とても自然な事だから恥ずかしがる事はないと言っていた。

…けど、そう言われても恥ずかしいものは恥ずかしい。


そして、何度も何度も吸い付くようなキスを唇にし、名残惜しそうに唇をゆっくりと離すとトロけた表情に更に色がかかり妖艶なサクラは言った。


「…これ以上は…」


とても、切なそうな顔をしていて何だか、とても辛そうだ。

グッと唇を噛みギュッと目を瞑っている。
シーツを強く握り耐えるようにフルフル震えていて


「……せめて、15までは…我…漫っ…!」


と、何度も念仏を唱え、綺麗な顔を酷く歪めている。

夢の中のサクラは、いつもたくさんたくさんキスをして最後は唇にキスをして終わる。

その時も、いつもこんな感じで気になっていたのだ。


「…サクラ、具合悪いの?大丈夫?」


ショウが心配そうに声を掛けると


「…いいえ。ショウ様があまりに魅力的で…その……」


サクラは、都合が悪そうにサッとショウから目線を逸らし少しの間を開けてから


「…とても、性的興奮を覚え…我慢ができなくなってしまうのです。」


と、ベッドに正座して俯いてしまった。


…え?

んんっ…??


サクラの言葉の意味に頭が追いつかない
ショウ。だって、周りから“ブス、デブ、こんなヤツに恋なんてできない。好かれただけでキモイ”など、散々罵られてきたのだ。

なのに、サクラは何て言った?


魅力的?

性的興奮をする?

…私で???


…なんと、自分得な都合のいい話なんだと…

あり得ないと思った所で、ショウは思い出した。


…あ…

コレ、夢だった。

そりゃ、自分の都合のいいようにできちゃうもんね。


自分の願望の強さに、ちょっと苦笑いしちゃう。

そうだった。じゃあ、夢なら許されるよね?

現実じゃ、無理だし。


そう思った、ショウはベッドから上半身を起こし


…ギュッ!


と、サクラに抱き付いた。


「…ショ、ショウ様?」


サクラの驚きと慌てたような声が聞こえる。


「…サクラ、大好き!」


サクラの耳元でそう伝えると


…ドックン!ドキドキドキ…


サクラの心臓の音や鼓動が、ショウの体に伝わってきた。…いや、これは自分の心臓の音かもしれない。

サクラにも私の心臓の音伝わっちゃってるのかな?凄く恥ずかしい!

顔を真っ赤にしながらショウは、サクラの顔を見ると


「…結婚してくれる?」


と、首を傾げサクラに聞いてみた。


ドキドキドキドキ…


わぁぁ…夢の中って分かってるけど、ドキドキが止まらないよぉ〜。
うぅ…口から心臓が飛び出しそう…


なんて、思ってると


「…は、はい!喜んでっ!!
こ、ここちらこそ、不束者ですが、よろしくお願いします!!!」


サクラは、ショウから少し距離を取ったと思ったら、勢いよく土下座をしてきた。
それも、そこが床だったら頭割れるのではないかと思うほどまでに。
…ここが、ベッドの上で良かったと思う
ショウだ。


…きゅん!


サクラ…かわいいなぁ。

…でも…


「…現実は、無理だもんね。」


ショウが、悲しそうにそう呟くと


「…え?…ショウ様?…それは、一体……」


と、ショウが何を言っているのか理解できないと言わんばかりに困惑したサクラがいた。

ショウは、ううん!と、無理に笑って見せ
サクラに抱き付く。
それを受け止めて、サクラはとても嬉しそうに頬ずりしていた。

けど…


頬ずりも、すぐにピタリと止まり

サクラはショウの肩に手を置くと、ゆっくりと体を離し



「…現実では無理って、どういう事ですか?」



辛そうな表情を無理に引き締め、ショウの目をジッと見て聞いてきた。

…でも、ショウは何も答えられず下を俯くばかりだった。


しばらくの沈黙が続き



「…今日の所は、ここでお別れします。
……また、会ってくれますか?」


サクラが、不安気にショウに聞いてきて


「…あ、会いたい!毎日、ずっとずっと会いたい!」


ショウは、サクラがあまりに不安そうだったから思わずサクラに飛びついてギュッとした。

サクラは、少しホッとした顔をして
“おやすみなさい”
と、いいショウのおデコに優しいキスを落とした。

すると、ショウの意識は少しづつ遠くなっていき心地いい眠りについた。

これも、いつもの事。


サクラが、“おやすみなさい”と、声を掛けると急激な睡魔が襲ってきて眠ってしまうのだ。



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