イケメン従者とおぶた姫。
大変な事になってるなぁ〜、関わりたくないなぁ〜、でも、どうにかキウを助けてあげられないかなぁ〜と、悩ましい気持ちで

キウとユコの様子を見ていたショウであったが

見すぎてしまったのか、運悪くバチッとユコと目が合ってしまった!!


…わっ!!?

最悪だ!どうしよう…!!

と、ショウがパニックになっている間にも、見下して嘲笑うには格好の餌食を見つけたとユコは面白いオモチャを見つけたかのようにニヤニヤしながらショウに近づいてきた。


「あれぇ〜?こんな所に、大豚がいると思ったらショウじゃぁ〜ん!
勉強もできない、運動音痴、不器用、デブ、ブスで何の取り柄もない底辺の何をやってもダメダメな“おぶた姫”は、学校にも行かないでこんな所で何してるのぉ〜?」


…ひ、酷いっ!

どうして、そんな酷い事言うの?

ユコに、ボロクソに言われてショウは凄く泣きたくなった…と、いうか既に涙が込み上げてきた。


「そういえばさぁ〜。ショウって、何か資格持ってるのぉ〜?
ウチさぁ〜、最近pc計算式検定の5級取ったんだよ。って、言ってもpc計算式検定って資格がある事すら知らないよね?登校拒否して学校来てないもんねぇ〜。他にも、2つ資格持ってて全部で3つ。
あんたには、考えられないくらい凄いでしょ?キャハ!」


た、確かに、そんな資格があるなんて知らなかったけど

好きで、登校拒否したわけじゃない…

と、ショウが悔しい気持ちで下を俯いた。

それを見て、もう我慢ができないとロゼが行動を起こそうとした、その時だった。


「…ハァ。たかだか、5級の資格を3つ持ってたくらいで、こんなにも人を馬鹿にできるなんて、ある意味凄いな。」

傷つき俯くショウの前に、サクラが立ちユコを見下ろした。

175cmはあるサクラに見下ろされ、チョッピリ怖く感じたユコは彼氏の腕にギュッと抱き着き


「…いきなり、何なんですか?あなたには関係ない事ですし、ウチはまだ小学校6年生なんです。ウチくらいの年齢で、資格3つ持ってる子はあんまりいないんですよ?」

と、自分を否定されてカチンときたのだろう、サクラに言い返した。そして、サクラの全身をジロジロ見ると、プッと笑い


「それに、魔法衣のフードをそんなに深くかぶって顔隠してるなんて…プッ!まさかとは思いますけど…まさかのまさか
そこにいる、おぶた姫の事庇うくらいだから、自分も似たり寄ったりのブサイクなんですか?ブス同士、傷を慰め合ってる感じですか?」

“私様”に喧嘩を売ってきたサクラが気に入らなかったのだろう。
ユコは、サクラの容姿が不細工だと決めつけるなり、自分よりも下だと格付けしサクラの容姿を侮辱してきた。


「さすが、虐めが趣味のゲスだ。口汚く心まで醜すぎて感心する。
そして、よくそこまで自分をひけらかせる。凄いな、ある意味感心する。お前が、性格ブスな上にゲスで凄いのは分かった。
だが、今後ショウ様にちょっかいかけるのはやめろ。お前みたいなゲスと一緒にいるだけで、ショウ様が汚れる。」

と、サクラは汚いモノを見るかのようにユコを見ると、シッシと手でアッチへ行けと合図した。

このムカつく態度に、ユコは
ムキーーーーーッッッ!!!?と、苛立って


「信じらんないっ!!ちょ〜〜〜性格悪いじゃん!!!最悪ッッ!!!」

そう言い残して彼氏と一緒にその場を去って行った。


「サクラよ!ぬるい!生ぬるい、ぬるすぎるぞ!!もっともっと、コテンパンにしてやったら良かったのに!
何ゆえ、あのムカつく女子をギャフンと言わせなかったんじゃ!!」

ロゼは、ユコをぐうの音も出ないくらいにコテンパンにやっつければ良かったのにとプンプン怒っていた。

例えば、サクラは凄い資格をいっぱい持ってるとか!

フードを脱ぎ捨て、サクラの超絶イケメン顔を披露するとか!!

サクラなら、あの女子を完膚なきまでに叩きのめさせる材料はいくらでもあるじゃろ!!!

と、ロゼはギャーギャー言ってたが、そんなのサクラから言わせれば


「時間の無駄だ。それに時間を割くより、ショウ様との貴重な時間を過ごす事の方が断然大切だ。」

だった。

そんな事、自慢するものでもない。

何より、いくらこっちが正論を言った所でユコのような人間は、聞く耳なんて持たないだろう。

それどころか、自分に都合のいい言い訳を並べ絶対に自分の非を認めない。悪あがきで意味不明に卑下してくる。どうしても、自分を優位に見せたいのだ。

そんな相手に何を言っても無駄だし、そんな奴とは一刻も早く離れたい。関わりたくない。


そんな所かと、ロゼは読んでいたが

実際のところサクラは、単にユコと言葉を交わすのが嫌だった。ユコの論理や筋道、行動原理は生理的にに受け付けなかった為、さっさと追い払いたかっただけだった。同じ空間にいる事すら嫌だったのだ。

だが、ショウの心を傷つけたのは絶対に許せなかった。

だから、ユコとの気色悪い会話が長引くのを我慢して、無口なサクラが思いつくだけの悪口を言ってやったつもりだ。

しかし、サクラにとってその代償は大きかった。

生理的に受け付けないユコと話した為、サクラの顔や腕には蕁麻疹が出ていて痒そうにしていた。

それを見てロゼは何となく察した。


…フム。相当、嫌なのにお主様の為に頑張ったんじゃな

そう感じ取りながら、ショウの心の傷を癒す為にショウにピトッとくっ付き
“大丈夫だよ、我がいるよ”と、
ショウの頬にスリスリと顔を擦り付けながら、時折ペロペロショウの顔を舐めていた。

サクラがユコを追い払う役に徹してた為、ロゼはショウの側に寄り添い慰め続けた。

ショウは、自分を心配し慰め続けてくれたロゼの頭を優しく撫でると


「ロゼ、ありがとう。」

と、お礼を言ってロゼをギュッと抱きしめた。
そして、目の前に立つサクラにギュッと抱き着き


「サクラ、ユコさんを追い払ってくれてありがと。」

そうお礼を言ったのだった。すると、抱きつかれたサクラは険しい顔から柔らかな表情に変わり


「はい。」

と、サクラの細い腰に回されたショウの手にソッと触れた。ショウに触れた事で、気持ちが落ち着いたのかサクラの蕁麻疹もいつの間にか消えている。

「…私のせいで、サクラも悪く言われちゃって…ごめんね。」

ショウは、自分のとばっちりを受けてユコの犠牲になってしまったサクラに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。


「いえ。ショウ様のせいではありません。
ショウ様が気に病む事はありません。それに、私の事などいいのです。そんな事よりも、ショウ様の傷ついた心が心配です。」

なんて、サクラは自分の事なんてそっちのけでショウを思う優しい言葉を掛けてくれる。
それに…


「しっかしの!あのユコとかいう女子、頭がおかしいとしか思えん!アヤツには、人の心がないのかの!!最ッッッ悪じゃ!!!」

ロゼは、ショウの代わりにいっぱいいっぱい怒ってくれるから


「二人がいてくれるから、私、すっごく幸せ!」

ユコにつけられた心の傷よりも、ショウの心に寄り添い親身になってくれるサクラとロゼに感謝と嬉しさの方が勝り、自分はなんて恵まれているんだと幸せを感じていた。


そんな様子のショウに、サクラはかなりの不満を抱いていた。


…イラ…


…バカ猫め。出会って間もない新参者のくせに、何故こうもあっさりと人見知りなショウ様の心を開く事ができる!?

あっという間に、あんなにも仲良くなって

まるで気の置けない昔からの仲みたいな…

ショウ様もショウ様だ!

あのバカ猫と、あんなにイチャイチャと…クソッ!!?

…見た目年齢のせいか?

ショウ様とバカ猫は、年齢的に同い年くらいに見える

だから、同じ目線になれるとでもいうのか?


…もや…


そもそもの問題。見た目か?
バカ猫の見た目が、ショウ様の好みって事なのか?

…いや、性格?あの甘ったれた性格がショウ様の心を掴んだとでも?

俺との圧倒的な実力差が原因か?
俺がバカ猫に、無様に負ける姿を見て…ショウ様は弱い俺に幻滅したのか?

…もやもや…


…クソ…

クソッ、クソッ!!!


ショウとロゼが、仲良くしている姿を見て
サクラの心の中は、嫉妬の渦が渦巻き二人に対する気持ちを頭の中でグルグルと考えギリギリと歯ぎしりしていた。

それに、ショウに対しても腹が立って仕方ない。

ショウは言った。


“二人がいてくれるから幸せ”だと。

それは、つまりはショウにとって自分はロゼと同等の位置にいるという事。

ショウにとって、サクラだけが特別ではないという事。

そう思ったら、サクラはもう我慢できなかった。気がつけば、あろう事かショウに向かって、不満ありありですと言った風にムスッっと顰めっ面をし


「私という従者がいながら、何故そんな新参者の猫ばかり構うのですか?
ショウ様にとって私などでは、従者として役不足という事でしょうか?」

と、まで、捲し立ててしまっていた。

だが、いけない!ショウ様を責めるようなこんな酷い事は絶対に言ってはならないのに。
なのに、ダメだと思っているのに一度飛び出した言葉は勢いのまま止まる事なく

遂には


「ショウ様には、私など居なくともロゼがいます。どうぞ、二人仲良く旅を続けて下さい。
私は、実家に帰らせていただきます!」

なんて、勢いで言ってしまい

引っ込みのつかない気持ちと言葉のせいで、

今現在…サクラは…


ーーーーー



「…なるほどな。オブシディアンから報告は受けていたが……プッ!“実家に帰らせていただきます”って、お前は夫婦喧嘩して家を飛び出した嫁かよ。」

と、布団の中にこもっているサクラを見下ろし、リュウキはサクラを揶揄って笑っていた。

しかし、状況が状況であまり好ましくないのかも知れないが、リュウキは正直これを少し嬉しく感じていた。

つまり、サクラにとって少なからず
ここは自分の家だという認識があるという事。

ショウ以外、他を寄せ付けず心を開かないサクラだと思っていたのに。
長くサクラと過ごすうちに、歳の離れたクソ生意気な弟のように思っていたリュウキにとって、これが嬉しくないわけがない。

だから、少しは可愛い所もあるじゃないか、まだまだ子供だなと、つい構いたくなってしまうのは仕方あるまい。

しかも


「信じられないな。お前、泣いているのか?」

サクラは、布団の中で悔しいと声を出して泣いているのだ。普段、冷静沈着であまり感情を表に出さないサクラが泣いている。


「…うるさい!なんで、勝手に俺の部屋に入ってくるんだ!?プライバシーの侵害だ!
早く、出て行けっ!!
…ショウ様もショウ様だ!あんな新参者と、あんなにイチャイチャと…!」


嫉妬丸出しで、サクラの様子を見に来たリュウキに八つ当たりまでしている。
…いや、いつもリュウキに容赦のないサクラではあるが。

それはそれとしてだ。そもそもの問題、その部屋はサクラの部屋ではなくショウの部屋だろ、お前に用意してある部屋は別にあるだろ、と、リュウキは心の中で突っ込んだ。


「しかも、“二人がいてくれて良かった”なんて!ショウ様にとって俺とあのバカ猫の位置付けが一緒って言ってるようなもんじゃないか!?
…アイツより、俺の方がずっとずっとショウ様と一緒にいたのに…!!ふざけるなっ!!!」


なるほどな。

古くからショウの世話をし続けてきた自分と、いきなり現れた新入りのロゼの立ち位置が同じなのが気に入らないという事か。


「…やはり、ショウ様は同じ年齢くらいの奴がいいのか?アイツみたいな容姿が好みなのか?

…だが、それでもショウ様の一番は俺じゃなきゃ嫌だ!

俺にとってショウ様が全てだというのに…」


確かに、その気持ちは分からなくはないな。
好きな相手に、一番に思われたいという気持ちは誰しもが思う所だろう。

まして、その思いが強ければ強いほどに。


「その為に、今の今まで惜しみない努力をしてきた。…なのに…!クソッ!あのバカ猫のせいで、全てが台無しだ!

俺が長い時間掛けて積み重ねたてきたものが、アイツが現れてから一瞬のうちに打ち砕かれてしまった気分だ。

…最悪だ。

…だが、ショウ様と俺は恋人でもなければ夫婦でもない。ショウ様にとって…ただの従者にしか過ぎない俺は、それでもどうこう言える立場じゃない。

…それは、重々承知だが。

だが、…嫌だ!誰にも渡したくない!
…ならば、いっそのこと…どこかにショウ様を隠してしまおうか?」


…ゾ…

それは、本当にやめてくれ

知ってはいたが…怖すぎるぞ、サクラ


クヨクヨしながら不貞腐れているサクラを見るのは初めてのリュウキだ。…いや、二度目か。

今まで、周りから恋愛対象として圏外判定され見向きもされなかったショウ。

ショウをそういう対象として見ているのはサクラだけ。

しかも、人見知りで口下手なショウは友達も満足にできない。だからこそ、ショウにとってサクラは自分を一番に大切に思い接してくれる唯一無二の存在。

サクラがいなければ生活できないと言っても過言ではない。それについては、リュウキの頭の痛い所ではあるが。それは、さて置き。

有り難い事に、その事実はいつまで経っても変わらない。そう考えていたサクラ。

だから、余裕だったのだ。

ショウには、自分しかいないのだと。

だが、ショウに対してだけは欲深いサクラは、ショウが自分無しでは生きられないように策謀し実行した。挙げ句、念のために一般的に嫌厭されがちな超デブにした。もちろん、健康には気を使った。

これで、もう大丈夫。

ショウの一番は自分だ。

と、安心しきっていた。

なのに、ここに来て剣の天守であるロゼが現れた。これは、サクラにとって予想外、想定外の出来事。

ショウを一番に思い大切にしたい、恋愛対象に見てると、自分以外の人間がいた事にも衝撃を受けたに違いない。
今まさに、予想だにしてなかった事態に直面してサクラは焦っているのだ。

パニック状態で冷静さを失っているサクラは焦燥感と不安に駆られ、これから、どうしたらいいのか全く分からない。

その焦りと不安をショウにぶつけ、大切なショウに酷い言葉を言ってしまった自分に対して、自分を許せなく、その罪悪感に耐えきれず逃げてきたのだろう。

今のサクラの気持ちと頭の中は、色んな感情がグチャグチャで自分でも収集が付かなくなっている事だろう。

ただ一つ言える事は、サクラにとってロゼという初めてできたライバルという存在はかなり大きい。


しかしだ。

ここで問題なのが、ショウだ。

もしもだ。仮に、この事態でサクラに同情したショウが

“大丈夫だよ。私にとっての一番はサクラだよ。サクラ、大好き。”

なんて、いつもの調子でサクラを慰めたならサクラは直ぐに立ち直る事ができるだろう。

だが、一方でロゼは崖から突き落とされたような気持ちになり絶望するだろう。

どっちに転がっても、片方は幸せになり片方が傷つく。

俺としては、サクラの幸せを願う。それは、家族としてエコ贔屓してしまうのは当然だからだ。

だが、誰も味方のいない一人きりであるロゼの事を考えれば…心が痛まない訳がない。
今のロゼにはショウしかいないのだからな。

難しい所ではある。

願わくば、父親として娘が悲しまない方向に進む事を望む。


…とは思ったものの

ここで、更に少々困った問題が発生している。


…それは…


「…サクラは、ロゼが嫌いなの?」

本来なら、この部屋にいないはずの人物の声が聞こえた。その声に驚き、思わずサクラは布団から飛び起き、その声のする方向を見ると


「……っっ!!?…な、何故、ショウ様が…?」


驚愕で、頭が真っ白になっている様だった。
現にサクラは、その声の持ち主を見て固まり、口をパクパクさせるだけで言葉がなかなか出てこないでいる。

…まずいな、と、リュウキは思った。


ショウの言葉一つで、サクラとロゼの運命が決まるとも言える緊迫したこの状況。

ダリアの時のように


“サクラが嫌いなら、私も嫌い”


なんて、ショウが言おうものなら…ロゼはどうなってしまうのか。自分の輝かしい道や順風満帆が約束された希望溢れる未来を捨ててまで、ショウに尽くそうとしている剣の天守は。

リュウキは、そう考えると全身に冷たいものがゾクリと走った。

サクラが実家に帰って来た知らせを受けた時、リュウキはサクラの事は一旦お婆に任せ状況次第で自分も動こうと思っていた。

だが、しかしな事態が起きてしまったのだ。

サクラが去り、ショックを受け泣いているショウ。そんなショウをロゼは懸命に慰めるも、サクラの名前を呼び赤子の様に泣き続けるショウに白旗を降ったロゼは


「我はお主様が悲しむ姿など見とうない。じゃから、お主様。サクラに会いに行こうぞ。
会って、ちゃんと話し合おう、の?」

と、言ってショウを抱きしめ姿を消したという。

オブシディアンの細やかな報告はもちろんのこと。もしかしたら、ロゼがワープ(瞬間移動)してサクラの元へ行くかもしれないと、いう予測によりリュウキはショウ達が来る前にサクラの居る部屋へと駆けつける事ができたのだった。

そして、リュウキがサクラに声を掛けて間もなくの事、オブシディアンの予想通りロゼのワープでショウが部屋に現れたのだった。

それには,まさか本当にワープを使いこなす人物がいるとはと驚きはしたが

自分が知る限りは、ワープを使える者はダリアと…未熟で危険ではあるがワープを使える可能性としてサクラ。

そして、我が国の副騎士団長であるフウライが、数年前からワープを使えるのではないかという疑惑もリュウキの頭の中に浮上していた為。

そして、優秀なオブシディアンの洞察力と予測能力を含んだ報告が合わさりリュウキは、あり得る話だと即座に判断して行動に移したのだ。

しかし、まさかとは思っていたが…

本当に、ワープしてくるとは…信じがたいとリュウキはロゼの魔導のバラエティーの豊富さに驚きを隠せずいた。

ショウの天守ならば、圧倒的強さを持っていて当たり前だとは思っていたが…加えて、こんなに多種多様に魔導を使いこなすなんてと。

使えない魔導なんて無いのではないかと思うほどだ。

うちのフウライとロゼ、一体どちらの魔導が上か気になる所ではある。そして、二人はどの様な魔導を使えるのか知りたいと思っている。


…だが、バットタイミングだ。

ショウの姿が目に入るや否や、サクラは泣き腫らしたみっともない姿を見られ羞恥のあまり頭からシーツを被り姿を隠し


「…ショウ様、どうかお願いします。
私の今の姿…見ないで下さい。」


と、カタカタと震えながら土下座し懇願した。
普段のサクラからは考えられない、サクラらしからぬ珍しい姿だ。


…最悪だっ!!?

こんな…みっともない!

…嫌われる…!


サクラは、ショウに自分の醜い姿を見られた事がショックで。そして、こんな惨めで陰陰滅滅な自分を見て、きっとショウは呆れ幻滅したに違いない。そう思ったら、怖くて怖くて仕方なかった。

サクラは、ショウに嫌われたくないあまりパニックにパニックを重ね、もう自分ではどうしたらいいのか分からなくなっていた。

頭の中は、どうしようと嫌われたくないがグチャグチャと混ざりあって収集がつかなくなっている。


こりゃあ、どうしたらいいもんかとリュウキが考えていると


「…サクラ、ゴメンね?」


と、ショウはゆっくりとサクラに近づいてきた。

その“ゴメン”は、何に対するゴメンでどんな事言うつもりなんだ。余計な事は言わないでくれよ?と、リュウキはハラハラしながら、ショウの様子を不安気に見ていた。
< 94 / 119 >

この作品をシェア

pagetop