恋のリードは  彼女から!
好きな人と結ばれなかった大おばあ様の悲しい恋を思い

温子は早川家の格式の厳しさと実業家としての責務の重さを噛みしめた。

純一を好きになってまだ付き合いも浅い今は

楽しい恋心に浮かれるばかりだ。

純一は温子に対して真剣な気持ちでいることは最初から示していた。

温子はそうではなかった。

決断を伸ばし伸ばしにしたところで

自分に返ってくる後悔が大きくなるかもしれない。

「単独で大おばあ様に会う必要があるわね。それが私の覚悟になると思う。」

温子はそう考えて直ちに行動した。

早川の両親が詫びに見えた時に置いて帰った菓子折りに

カードが添えてあったことを覚えていた。

その後、大おばあ様からも花束が届き

手紙かカードがあったはずだ。

温子は真夜中に階下でそれらを捜した。

おおよそ母親が置くであろうリビングのボードの上か

ラックの引き出しの中だと見当はついていた。

「あった。両方ある。」

忍び足で2階の自分の部屋へ戻り

スマホに連絡先を登録した。

平日の午後に半休を使って時間を取るしかない。

純一の両親よりも先に大おばあ様と話したかった。

なぜなら彼らが見合いの席で頼りなさげだったことを確信していたからだ。

早川家の誰かを通さずに直接大おばあ様に面会すること自体

前代未聞か世間知らずかもしくは大胆な愚か者呼ばわりされるかだ。

温子は自分がこのことで少しでも理解したい気持ちでいることを

伝えられることができればと思った。

後日大おばあ様への面会があまりにもスムーズに運んだので拍子抜けした。

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