君がいたから

「はい、音は良かったから大丈夫だよ
次は喉見せて。あーんだよ」


「……………」


柔らかい笑顔のままペンライトを手に取る蓮
だけど、口を開けなかった。

昨日叫んで喉がヒリヒリ痛いし…

小さいころから風邪をたくさん引いて
病院のお世話になることが多かったから
何されるかだいたいわかっている。


「結愛、喉痛くなっちゃった? 」


黙っていたのに叱ることもなく、顔を覗きながら、そうたずねてくる。

普通なら簡単な診察くらいさっさとやるよって、
言われると思うけど、蓮は極力恐怖心をあたえないように、私のペースに合わせて話もよく聞いてくれる。


「…痛い 」


だから隠し通そうとしていても、本当のことが口から自然と出てしまう。


「そっかそっか…痛いのすぐ治すから
少しだけ見せて 」


「…うん 」


口を開けるとペンライト入れて真剣に見る蓮


「…偉かったな
だいぶ喉が腫れていたから、今から薬もってきてもらうよ 」


喉に塗る薬でしょ?
あれ染みるから嫌だよ…

< 88 / 220 >

この作品をシェア

pagetop