直球すぎです、成瀬くん



……て、な、成瀬くん、聞いてたの………ていうか、どうして覚えてるの…………?



「訊いてんだけど」

「……っあ、」


いつの間にか作業する手が止まってしまっていた私に対し、成瀬くんはなおも手を動かしながら、急かすようにそう訊いた。


「…ジェラート屋さん、です。家の近くにあるんですけど行ったことはなくて、ずっと気になってて……」

「…へー」

「……」



………え、お、終わった……?


またもや気のない返事が返ってきたと思ったら、それ以降、成瀬くんは何を言うわけでもなく、また黙って作業を続けた。



……き、訊いておいて、それだけ…………?

…い、いや、特に何か反応が欲しかったとか、そういうのは全然なかったけれど……何だろう、この気持ち………

行き場のないモヤモヤが胸に広がった。





「……終わった。おまえは?」

「…っあ、お、終わりました…っ」



それから数分で、作業は終了した。

成瀬くんが手伝ってくれたおかげで、すぐに終わった……よかった。


「あの、ありがとうございます」

「別に」


大きく伸びをすると、机に置いていたスマホを確認する成瀬くん。


……も、もしかして、何か用事とかあったんじゃ…

今更そんなことに気づいて、途端に申し訳なさに襲われる。


「あの、ごめんなさ…」

「じゃ、行くぞ」

「……え?」


頭を下げかけていた私は、そっと見上げる。

立ち上がりスマホをポケットに入れると、鞄を掴み私を見下ろしていた。


「…い、行くって……どこに…」

「ジェラート屋」

「………え……?」




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