直球すぎです、成瀬くん




「ちょ、成瀬ぇぇぇ俺にも肉取ってよ〜!!」

「うるさい。食べたいなら自分で取れ」

「つめてーなあっ。て、おいっドコ行くんだよ!?…無視はナシだよ成瀬くん〜!」



不意に耳に入ってきた会話を隣の百叶も聞いていたようで、私と同じようにぽかんと口を開けていた。



「……あれ、確か同じクラスだよね、背の高い方の男子」

「…う、うん」



背の高い方の男子……成瀬くんは、男子に話しかけられるも颯爽とそれをかわして、どこかへ行ってしまった。

逃げられた、といった表情のその男子は、見たことがないからきっと他のクラスだろう。


成瀬くん、クラスの男子と話しているのをちゃんと見たことがなかったから………というか、極力成瀬くんの視界に入らないようにしていたからそこまで成瀬くんを見ることもなかったけれど……

話していた、というか話しかけられていた相手が、成瀬くんとは正反対な感じの人で少し驚いた。しかも他のクラスみたいだったし……


少し日焼けした肌に、茶色いツイストパーマが印象的なその人は、他の男子に呼ばれるとすぐにその輪の中に消えていった。





「っあー美味しかったあ〜」

「ね、もうお腹いっぱい」

「じゃあ、2人ともまた明日ね〜!」

「うん、おやすみ」

「おやすみ〜!」



バーベキューの後片付けを終えて中に戻ると、寝る部屋が別のまりなちゃんと玲可ちゃんとすぐに廊下で別れた。

あとはもう、お風呂に入って荷物をまとめて寝るだけ。

あ、寝坊は絶対にしないように、アラームは5分おきにセットしなきゃ。迷惑だけはかけられないし……



「…あ」

「…え?」


突然、隣を歩いていた百叶が立ち止まり声を漏らした。


「ど、どうしたの?」


しきりにジャージのポケットに手を入れて、何かを探している様子の百叶。


「……スマホ、外に忘れてきたかも」

「え、」

「たぶんテーブルに置きっぱなしで来ちゃったんだわ、取ってくるから先部屋行ってて!」

「え、わ、私も探しに…」

「大丈夫、ある場所見当ついてるから、ありがとね」


そう言うと百叶は踵を返した。


………ここで、追いかけて行っても、きっと逆に迷惑だよね…………場所の見当ついてるって言ってたし……

私は言われた通り、先に部屋へと向かった。


< 30 / 132 >

この作品をシェア

pagetop