直球すぎです、成瀬くん





「……」

「……っ、」



廊下の角を曲がったところで、私は思わず立ち止まった。


ちょうど角を曲がってきたのか、目の前に成瀬くんがいたからだ。



視界に入らないようにするどころかしっかり入ってしまっている……数学の時隣だったのに引き続き、また……………



申し訳なさでいっぱいになった私は、せめてもの会釈をして、その横をそっと通り過ぎた。

これ以上、もう本当にこれ以上不快に思わせちゃいけない………



「おまえさ」

「っ、」



何事もなく通り過ぎたと少し気が緩んだ瞬間、背中の向こうから声が飛んできた。


恐る恐る、振り返る。



………こ、今度は何を、言われるんだろう……………



「おまえ、見ててムカつく」

「…………」



それだけ言った成瀬くんは、あっという間に廊下の向こうに消えてしまった。





…………あ、また、だ………………



また自分が自覚していないうちに、成瀬くんに不快な思いをさせてしまっていたのだと、成瀬くんのハッキリした口調で気づかされた。

私は、どうして……………



顔色をちゃんと見て、人の気持ちを感じ取ることだけが私の取り柄なのに、どうして、成瀬くんを不快に思わせてしまっていることをちゃんと感じ取れないんだろう。

どうして…………




やっぱり、私は成瀬くんの言う通り、アホなんだ、勉強だけじゃなくて、こういうところも、全部………………






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