直球すぎです、成瀬くん
「んで、ゆずゆず、本題、教科書は?」
「……あ、えと……」
鞄を膝の上に載せて、中身を確認する。今日英語の授業ってあったっけ………
「………あ、ご、ごめんなさい、持ってないです……ごめんなさい…」
よりによって、どうして今日……
私は思わず頭を抱えそうになる。
「あー持ってないかー、ザンネン」
「…ごめんなさい…」
いーのいーの!とケロッと笑った宮城くんは、ちらりと私の隣に目をやった。
「何でうちのクラス来てんだよ。おまえなら自分のクラスのヤツに見せてもらえんだろ」
隣から聞こえる低い声。私もそっと顔を向けると、眉間に皺を寄せた成瀬くんが、宮城くんを見上げていた。
「ったくわかってないなあー、教科書借りるチャンスなんだよ?どうせ借りるならカワイイ子に借りたいじゃん?ね、蓮クン」
「……」
そう言ってウインクをしてみせる宮城くんに、成瀬くんは特に何の反応も見せない。
ため息を吐きながら腕を組むと、窓の外に目をやった。
……いつも通り、機嫌が悪そう………
……成瀬くん、私に対してもそうだけど、宮城くんに対しても、こんな感じなの……?
会話らしい会話なんてしたことないけれど、言葉を交わすと100%の確率で、トゲがある。
……さすがの宮城くんでも、ため息つきながらしかも無視されたんじゃ、きっと落ち込む……
「一応、一応ね、聞いてほしそーだから聞くけど、蓮クンは持ってる?」
「持ってねーし聞いてほしそうにもしてねーよ。てかその呼び方ヤメろ」