直球すぎです、成瀬くん



眉間の皺をさらに深くした成瀬くんがそう言い放ったのに、宮城くんはというと、また、肩を揺らしながら笑い始めた。


………み、宮城くん…………


何のダメージも受けていないといった感じで、ものすごい剣幕の成瀬くん相手でも、いつもの宮城くんのまま。


……す、すごい…………こ、これも、対人スキルなのか……


「相変わらず冷たいなー。もっと優しくしてよ、蓮クン♡」

「何か語尾につけんのもヤメろ」



目の前で繰り広げられる2人の会話に、私はただただ圧倒されていた。


……あの成瀬くんが、誰かとこんなに話しているのを見たのは初めてだし、それに不機嫌な成瀬くん相手でも、怯むことなくいつも通り接していられる宮城くんもすごい……


きっと、成瀬くんとこんな風に会話ができるのは、宮城くんだけなんだろうな………



「…あ、もう授業始まるじゃん」


ふと制服のポケットからスマホを取り出すと、画面に映った時間を確認したのか、宮城くんがそう言葉をこぼした。


「じゃーねゆずゆず!蓮と仲良くね〜」

「えっ……あ、え……?」


ひらひらと手を振った宮城くんは、颯爽と教室を出ていった。



……嵐みたいな人………


突然やってきてあっという間にいなくなった宮城くんを見て、私は心の中でそんなことを思った。



「…っはあー、ウゼ」

「っ、!」


隣から深いため息が聞こえたかと思ったら、成瀬くんは立ち上がると、そのまま教室を出ていった。


……え、授業、始まっちゃうのに………




私がそんなことを思っても、成瀬くんはそのまま、授業が始まっても教室に戻ってくることはなかった。


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