直球すぎです、成瀬くん


2日間の文化祭の締めは花火。


初めてそれを知った時は、文字通り目を輝かせた。



「あ!いたいた百叶、柚!」

「玲可、まりな、お疲れ様」

「お疲れー、午後マジでやばかった、ね、まりな」

「ちょ〜疲れたあ、ホント、信じられないくらいお客さん来たっ」



花火は4人で見ようと約束していた。事前に決めていた場所へ百叶と一緒にたどり着くと、すぐにまりなちゃんと玲可ちゃんが合流した。


「お、お疲れ様、まりなちゃん、玲可ちゃん」

「柚もお疲れ〜、調理忙しくなかった?」

「わ、私は大丈夫だよ」


マジで?すっご、と目を丸くした玲可ちゃんは、スマホで時間を確認した。


「あと15分くらいか、花火」

「んー、だね〜」



生徒も続々とグラウンドに集まってきて、話し声で辺りは一層賑やかになる。



「…あ、も、百叶…っ」

「………ん?どしたの?」


声が小さい方の私にしてはかなり声を張ったけれど、私の声は周りの話し声にかき消されてしまった。

けれど、百叶は私の視線に気づいてくれた。小さく首を傾げて、私と目を合わせる。


「…あ、あの、花火の前に、ちょっと、お手洗いに…」


少しでも聞こえるようにと百叶の耳元に近づいてそう言うと、百叶はうん、行っといで、と了承してくれた。

私は頷くと、駆け足で校舎へと向かった。






テストの前、遠くへ行く時バスに乗る前、授業の前ーーーたぶん緊張で、どうしても済ませておかないと不安になってしまう。

花火の前ですら私は緊張しているのかなと思いながら、3人のところへ戻るべく薄暗い廊下を歩いていた。




ーーーガタン


「ひっ、!」


私以外の誰もいないと思っていた校内に、突如響いた物音。


思いの外すぐそばで聞こえた音に、思わず声が漏れてしまった。


……だ、誰かいる………?


…せ、先生、かな………?




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