直球すぎです、成瀬くん



………あ、


不意に周りの空気が動く気配がして、信号機を見たーーー青に変わっている。



「……っ、え……な、何で……」


横断歩道を渡ろうと右足を前に出しかけたところで、足が止まった。


前方にいた成瀬くんが、なぜか振り向き私を見ていた。



「……」


何も発さない成瀬くんは、ただ私を見ている。



「……あ、あの………」

「すげぇ念を感じて振り返ったら眉間にすげーシワ寄せてるヒトがいた」

「……、」


その沈黙に耐えかねた私が口を開いたら、表情ひとつ変えない成瀬くんが一息でそう言った。



………ね、念、って…………


…た、確かに、成瀬くんの言葉を思い出して色々と考えてはいたけれど………



「……あ、」



返す言葉に迷っているうちに、成瀬くんは既に歩き出し、人の中に消えていった。


……ま、まただ…………初めて顔を合わせた、あの時と一緒…………


私は小さく息をつくと、鞄を持ち直して歩き始めた。






……嘘ついて笑ってるわけじゃない…

嘘をついて、みんなと一緒にいるわけじゃない……


4人でいる時は本当に楽しいし、時間もあっという間に過ぎる。

だから、あの気持ちはきっと嘘じゃない……はず。



…嘘じゃないって、私自身がちゃんと思えたらいいんだ。

今まで、確かに周りに合わせることが多かったから、きっと自分の気持ちに自信が持てないだけで、本当の私も、ちゃんと楽しいって思ってる。


4人でいる時の私はちゃんと本当の私だって、私が証明できればいいんだ…………!




何だか一筋の光が見えたような気がして、私の足は心なしか軽くなっているような気がした。





< 96 / 132 >

この作品をシェア

pagetop