直球すぎです、成瀬くん



「柚帰ろー」


「……っあ…」


机の上がまだ片付いていない私のもとに、赤いマフラーを巻いた百叶が声をかけに来た。


「…あれ、作業中?」

「…あ、うん……まだ、日直の仕事終わってなくて…」


広げた日誌に、百叶が視線を落とした。


「そうなの…?」


言いながら鞄からスマホを取り出した百叶は、画面を見ると再び私を見た。


「10分くらいなら手伝えるよ、私。何かできることある?」


用事があるからそこまで残れないけど、と付け加える。


「え……でも…」



今残ってる仕事………日誌、ゴミ捨て、担任に頼まれた本の返却………

………ど、どれも、そんな簡単にお願いしていい内容じゃない………



「…だ、大丈夫…私1人ですぐ終わるし……ありがとう、用事優先して…?」

「ほんとに?すぐ終わるの…?てか、成瀬くんは?」



席が隣同士の生徒でやることになっている日直。

がらりと空いている私の左隣の席に視線を移した百叶が、怪訝そうにそれを見ている。


「か、鞄、あるし、戻ってくると思う……だから、大丈夫だよ」



……確かに鞄は残っているけれど、すぐに戻ってくる保証はない………だから諦めて、私1人でこれらを終わらせるつもりでいた。



「……そっか……じゃあ、ごめん、今日は先に帰るね」

「ううん、気をつけてね」


頑張ってね、と手を振ってくれた百叶に手を振り返して、私はまた、日誌と向き合った。




< 98 / 132 >

この作品をシェア

pagetop