17時、カフェオレ。



伊藤先輩は10分ほどで帰って、私も18時にバイトを終えた。


「お疲れさまでした」

「お疲れーっ
また明日ね」

「はい!」


お店を出るともう暗くて、秋を実感する。
文化祭も終わって、この時間にもなると暑さもなくて、湿気もないこの空気がすごい心地いいい。


「優奈ちゃん」

「…ん?」


お店を出てすぐ呼ばれて、前をよく見ると


「お疲れ様」

「…理玖先輩」


理玖先輩が、そこに立っていた。


「ごめん、待ってた」

「え…?」


諦めると決めたばかりのこれは、ちょっと…気持ち揺れちゃうじゃん…


「ごめん、俺…
クッキーの味気づけなくて」

「あ、あぁ…
そんなこと、気にしなくていいです」

「でも俺…
優奈ちゃんの気持ち全然考えてなかったよね」


本当ごめんと顔を下に向ける先輩に
私の決心を固めた。

こんなことで揺らいでちゃダメだって…
どうせ、先輩の心がこちらに向くことはないんだから。

もう揺らぐな、優奈。


「…先輩
先輩は、自分の気持ち大事にしてくれればそれでいいです」

「え…?」

「彼女さんを想う気持ち、私は尊重します。
だから、別にそんなこと気にしてないです。
先輩は変わらずあそこで彼女さんを想いながらカフェオレを飲んでれば、私はそれで満足なんです」


先輩の幸せさえ見られれば、私はそれでいいんだ。


「…むしろ、今まで邪魔しちゃってすみませんでした。
私もう邪魔しないので」

「え?え、邪魔なんて…「それじゃ、おやすみなさい!」


まだ先輩はなにか言ってたけど、私はそれを聞かずに走って逃げた。
きっと先輩は私を庇ってくれる。

…でもあそこに、私の存在なんて必要ないんだから。


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