ドロ痛な恋が甘すぎて アミュ恋2曲目

「綾星はさ
 自分の部屋まで我慢できないわけ?」


「は?」


「毎日毎日。
 ほのかちゃんが仕事が終わった瞬間に
 店に飛び込んできて。
 抱きしめて。
 他人から見たら、
 お前、すっげー痛い奴だからな」


「なっ……」


「自覚、あんだろ?」


 う……。
 そこを突っ込んできたか。


 『痛い奴』とか言われちゃうと
 強気で反論なんてできねぇ。


 わかってるよ。


 俺のほのかへの想いは
 ドロドロに甘くて。

 周りから見たらドン引きなほど重くて。

 目をつぶりたくなるほど、痛々しいって。


 でも、しょうがねえだろ?


 自分で抑えきれないんだから。
 ほのかのことが、大好きすぎてさ。


「わかったよ。
 これからはしねえよ。店では」


「そろそろ、綾星の部屋に行ったら?
 二人の時間、減っちゃうぞ」


「あ、その前に。
 割りばしの補充、終わらせなきゃ」


「ほのかちゃん、もういいよ。
 あとは俺がやっとくから」


「奏多さん……でも……」


「俺、ほのかちゃんに
 残業手当あげたいくらい」


「え?」


「息子の世話代としてさ」


「は? 親父、なんだよそれ!」


 大声で噛みつく俺に
 親父はアハハと笑いながら
 俺の髪をわしゃわしゃとかき混ぜだした。


「やめろよ!」


「良かったな。綾星」


 親父の瞳が、いきなり穏やかになった。


 子供を思う父親みたいなマジ顔
 すんなよ。

 こっちが恥ずかしくなるんだから。


「大事にしろよ」


「は?」


「綾星の一番大切なもの」


 俺の頭の上に置かれた手のひらは
 想像以上に温かくて。

 俺も親父みたいな大人になりたい。
 素直に、そう思えた。


 でも恥ずかしすぎて……

「わかってるよ」と
 不愛想に答えるので
 精いっぱいな俺だったけれど。

 
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