ドロ痛な恋が甘すぎて アミュ恋2曲目

「あ、もう12時すぎちゃったよ」


「やべ。帰んなきゃ。
 明日、新曲のダンス練習
 入ってるんだった」


「家まで送ってくよ」


「は? ほのか、マジで言ってんの?」


「ダメ……だったかな?」


「ダメとかじゃなくてさ」


 なんか、綾星くんの顔が
 険しくなっちゃった。

 怒らせちゃったのかな?


「ほのかが夜道
 一人で帰ることになんだろ?」


「でも綾星くん……高校生だし……
 何かあったら……」


「ほのかの方があぶねえから」


 ものすごく
 綾星くんを怒らせちゃたみたい。


 悪魔のイジリを通り越して
 あきれ顔でため息をついている。


「……ごめんなさい」


「あ~、もう。
 ほのかが謝ることじゃねえから」


「じゃあ、玄関まで送って」


「うん……」


 リビングから玄関までなんて
 ドアを開けてすぐ。
 あっという間に、着いちゃった。


 バイバイする前に
 勇気を出して言ってみてもいいかな?


 そうしないともう……

 これで永遠にサヨナラに
 なっちゃうから……


 私が口を開こうとした時、
 弱々しい声が私の耳に響いた。


「また、見に来いよ」


「え?」


「俺の……ライブ……」


 私が言おうと思ったのに。
『ライブ見に行ってもいいかな?』って。


 それなのに
 綾星くんから言ってくれた。


 たったそれだけのことが
 なぜか嬉しくてたまらない。


 私は思いっきり激しく「うん」と頷いた。


「あとさ……
 また読みに来たいんだけど……」


「え?」


「ドロ痛……」


 それって、また会えるってこと?


「うん……いいよ……」


「来週のライブの後でも……いい?」


「うん……」


「じゃあ今度は、俺が夕飯作るから」


 その言葉と優しい笑顔を残して。
 綾星くんは玄関から出て行った。
< 78 / 177 >

この作品をシェア

pagetop