ドロ痛な恋が甘すぎて アミュ恋2曲目

「それで?」


「は?」


「ほののんと、何か進展あった?」


 友達の恋バナを聞く女子みたいに、
 キラキラな瞳を俺に向けている春輝。


 言えねぇ。


 俺色のネックレスをあげたとか。

 寝ぼけたふりしてキスしたとか。

 恥ずかしすぎて言えねぇし。


「進展なんて、ねえよ」


「嘘だぁ。ほののんと
 お部屋で二人だけだったんでしょ?」


「だから。
 ほのかの奴、
 寝ちゃったって言っただろ?」


「連絡先くらい、交換したの?」


「してねぇ……」


「じゃあ、次に会う約束は?」


「……した」


「じゃあ、その時にほののんに告白ね」


「春。
 なぁ。勝手に決めんなよ」



「だって、僕が強引な手を使わないと。
 あやあやは自分の気持ち
 伝えないじゃん」


「だって……あいつ……
 まだ、御曹司のことを大好きだし……」


 御曹司を想って泣き出したほのかを
 思い出し、
 えぐられたように痛みだした俺の胸。


 春輝の暴走を止めたいのに。
 そんな気力が湧き出てこない。


 その時。

 俺よりも絶対に傷ついていることが
 わかる痛々しい声が、
 俺の耳に届いた。



「あやあやは……贅沢なんだよ……」


「は?」


「自由に恋愛……できるくせに……」


 いきなり陰った、春輝の表情。


 さっきまで
 声を飛び跳ねて笑っていた人とは
 思えないほど、瞳を濁している。


 この前も俺に見せたよな?
 その辛そうな顔。


 能天気モードの春輝には
 言いたいことをズバッと言えるのに。

 泣き出しそうに顔をゆがめる春輝に
 吐息すらかけられない。


 だって。

 どんな言葉を口にしたって、
 お前のことを傷つけそうな気がするから。


「僕だって……本当は……」


 春輝、なんだよ?

 言えよ。
 お前が心ん中に隠してること。
 吐き出せよ、全部。


 俺がそう思った時。

 スタジオの隅で
 柔軟をしていたマトイが、
 慌てるように俺たちの方に駆けてきた。


「春、ちょっと来い」


「マー君……」


「池の鯉に、餌やりに行くぞ!」


 無理やり春輝の腕をつかむマトイ。


 春輝は悲しそうな瞳のまま
 コクリと頷くと、
 引っ張られるように
 マトイとスタジオを出て行った。

 
< 80 / 177 >

この作品をシェア

pagetop