黙って俺を好きになれ
「大丈夫だ、お前は感じてるだけでいい・・・」

そう言って繰り返し唇を啄み、頬、瞼、耳たぶ、首筋が優しく食まれる。

ニットの上から胸をなぞられ、やがて直に触れられると言い様のない感覚に勝手に声が洩れそうになる。懸命に堪えると低く囁かれる。

「声を我慢するな。・・・ちゃんと俺に聞かせろ」

敏感なところを舐められる初めての行為に翻弄されながら、どんどん理性が溶かされていく。

自分のものじゃないみたいな声を上げてしまうたび、脳髄が痺れるような刺激を与えられ。乱されているあいだに私の全てが露わにされていた。

「・・・白くて綺麗な体だな」

素肌を晒した先輩が見下ろして呟いた。

今までにない羞恥に顔ごと逸らそうとして、左肩から二の腕にかけて彩られた、咆哮する龍の頭に目を奪われる。

「背中も見るか」

釘付けになった私に、いったん覆い被さろうとした先輩が上半身を起こし、後ろ向きに胡坐をかく。

般若の面に鱗の胴体が巻き付いた鬼気迫る一枚の“絵”。・・・まざまざと思い知らされる、あなたが普通とは違うことを。

「俺は紛れもない極道者だ。・・・だが、今ここでお前を抱くのは女に溺れた、ただの男だ」

背を向けたままの静かな声に。
どこか重なった。
抗おうとして藻掻いていたあの頃の先輩と。同じに見えた。
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