黙って俺を好きになれ
早口でまくしたてられ、なんだか少し理不尽な気もしたけど言葉に詰まるしかない。

「言っときますけどオレ今、メチャクチャですからね?その勢いで糸子センパイを押し倒したらどうしてくれるんです?だから明日!、朝イチでまた来ますから!センパイも風呂入って、さっさと寝ちゃってください!」

手を掴み有無を言わせず玄関前まで一緒に戻った筒井君は。ダブルロックの鍵を開けさせて、トン、と中に向かって私の背中を押す。

「あの筒井君・・・!」

言いながら振り返った。・・・・・・その先は言えなかった。あんまり辛そうに笑うキミがいたから。

「・・・明日聞くから今日はカンベンしてくださいよ。体はタフなんですけどね、メンタルはわりと繊細なんですって、これでも」

力なく笑いながら『お休みなさい』を言って。閉まるドアの向こうに筒井君はいなくなった。

私はそこにいつまでも立ち尽くして。ブルーグレーのドアを見つめるだけだった・・・・・・・・・。






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