黙って俺を好きになれ
「筒井は一歩まちがえるとストーカーだよね」

「ひどいなーエナさん。溺愛って言ってくださいよー」

私とエナの向かいに座り、ふにゃふにゃ笑う筒井君。相変わらずよく出来た着ぐるみだ。

年が明け、あっという間にひと月近く。給料日の週末は後から合流した彼と三人で居酒屋にいた。

「糸子もヤバいって思ったら迷わず通報しなねー?」

「なんで犯罪者呼ばわりー。糸子さんはオレを信じてくれてますよねーっ?」

大型犬が耳を垂らしてきゅんきゅん鳴いている。

「・・・どうかな」

「うわ、今の傷付いたー、救急車呼んでくださいエナさーん!」

「あーうるさい」

冗談で言ったのにテーブルに突っ伏して泣き真似をする23歳、童顔男子。エナは知らん顔でジョッキの生ビールを呷る。
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