黙って俺を好きになれ
顔が見たくて、のその一言でぜんぶが浚われそうになる。掌の中できゅっとスマホを握りしめ、このあとの予定が入ったことを筒井君に告げようと意を決した。

振り返る前に。背中から抱き締められていた。

「あの人からだったんでしょ」

「・・・・・・筒井君、離して」

「やだ」

堪えて辛そうに聞こえた。でもこの腕の中にいられない、・・・今は。

「・・・おねがい」

「行かせたくない。・・・帰って来なくなるからオレのとこに」

私を閉じ込める腕にさらに力が籠もった。

「糸子さんだってオレをちょっとは好きになってるでしょ。じゃなかったら部屋に入れないでしょ?今だって死ぬ気で抵抗するでしょ、好きでもないヤツだったら!」
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