ポケットの中からの恋模様~くぅちゃん編~
「ビックリしたけど・・・瑞希ちゃんが純粋にくぅちゃんのことが好きだから、命がやどったんだろうね」

そうかな・・・そうなるのかもしれない。小さいころから、ごくごく自然にくぅちゃんと会話していたけれど。考えてみれば、くぅちゃんのことを話したのは、浩二先輩が初めてだ。ママにもパパにも友達にだって、話したことがない。

「じゃあ、また明日」

「はい・・・先輩、週末にはどこかに出掛けましょうね」

「ピクニックなんてどうかな。この辺は、いい場所が多い」

「そうしましょう」

ピクニックかぁ。ず~っと前、彩華(あやか)ちゃんって女の子と行ったっけ。元気かな、彩華ちゃんときょんちゃん。2人も、行方不明事件のあと、すぐに会話できるようになったって言ってたっけ。高校に入って以来、会ってないもんなぁ。あのときは、くぅちゃんもピクニック連れて行ったけど、先輩はくぅちゃん連れて行くの、子供っぽいって思うかな。

「くぅちゃん、連れて行ってもいい?私とは、心で会話できるの。きっと、先輩とも」

「もちろん、いいよ。3人で行こう」

「ありがとう。じゃあ、明日」

「うん、じゃあね」

先輩を見送って、くぅちゃんをぎゅっとした。

その日の9時半、くぅちゃんが言った。

「ホントに?ホントにボクも行っていいの?わぁ~い、わぁ~い!!」

「くぅちゃん、先輩と気が合うみたいだね」

「ボクも先輩、大好きさ」

いつもデートに付いてくるなんて、言わないわよね?

「心配しないで、そんな野暮はしません!」

笑顔のくぅちゃん。

「くぅちゃん、これからも、ずっとずっと、私と友達でいてくれる?」

「もちろんだよ。瑞希ちゃんがボクを捨てない限りね」

「絶対捨てない!!」

どんなに汚くなっても、ほつれても、治してみせる。

そこへ、ぬいぐるみの妖精さんがやってきた。

「くぅちゃん、定期クリーニングのお時間よ。ちょっと早いけど」

「定期クリーニング?」

不思議顔の瑞希ちゃん。

「くり~ん、くり~ん、くりくりくり~ん!」

妖精さんが呪文を唱えると、不思議なくらいきれいになって。

ほつれかけていた部分もきれいに閉じられていた。

「私も、ある程度はきれいにできるけど、丁寧に扱ってあげてね、瑞希ちゃん」

と妖精さん。

「はい、いつまでも、大切にします」

瑞希ちゃんとくぅちゃんが同時に言います。

「いついつまでも、ソウルフレンド」

「ホント、仲良しね」

妖精さんが、笑って飛んでいきます。

「大好き、くぅちゃん!」

「大好き、瑞希ちゃん!」

「そろそろ寝る時間だよ。ボクも、お茶会の時間まで、ちょっと休むよ。おやすみ」

「うん。おやすみ。気を付けて行ってきてね、くぅちゃん」

今日は、満月の夜です。月明かりが優しくくぅちゃんを導いてくれることでしょう。

☆Fin☆
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