ポケットの中からの恋模様~くぅちゃん編~
ファースト・キスの余韻に浸っているうちに、時間は5時50分になっていた。

「そうだ、くぅちゃん、ポケットから出さなきゃね」

胸ポケットからちいさなくぅちゃんを出して、ベッドの上に乗せる。

「これから、何が起きるって言うのかい?」

怪訝そうな浩二先輩。想像くらいつかないかなぁ。まぁ、普通、つかないか。

そして、6時ジャスト。

ぽよよん!!くぅちゃんが、ミニサイズの10倍以上の普通サイズに戻った。

「うわぁっ!!びっくりしたぁ・・・」

「ふふっ、これが、本来の、私のくぅちゃん」

「・・・」

「こんにちは、浩二先輩」

くぅちゃんが、口を開いてしゃべった。

「!!!!!」

「びっくり、するよね。でも、口で説明するよりいいかと思って」

「いや・・・説明、希望!」

「私が、小さいころにね・・・くぅちゃんが、夜中に出掛けていることに気づいて・・・で、そこでおしゃべりしたことから、毎日、寝る前の1時間、おしゃべり出来ることになったの。で、それから、ずっと、私の親友なの。今回は、私が浩二先輩に恋をして、様子を見たいって言ったくぅちゃんをぬいぐるみの妖精さんがあのサイズにしてくれたっていう・・・んだけど、理解できる?」

「言ってることは分かるけど、なんというか、不思議だなぁ」

「私は、子供だったから、すんなり受け入れられたけど、高校生ともなると難しいよね」

「いや・・・ファンタジーは好きだから、なんかいいなぁ。まだ、しゃべれる?くぅちゃん」

「外では、ボクの代わりに瑞希ちゃんを守ってあげてくださいね」

しんみり言うくぅちゃん。もう、一緒に来てくれないの?

「あのサイズは、特別だったから・・・もう、妖精さんが許可してくれないんだ」

「分かったよ。頼りないかもしれないけど、全力で瑞希ちゃんを守る!くぅちゃん、約束だ」

「男と男の約束だぞ!」

くぅちゃんが、ちょっとワイルドぶって言った。

「瑞希ちゃん。この時間も特別だから。約束成立したから、普通のぬいぐるみに戻るね。また、9時半に」

くぅちゃんはそう言うと、こてっ、とベッドに倒れた。
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