ほんとは、ずっとキミのこと、
あの雨の日
<新乃>

「あ、起きた?」
「…今何時?」
「10時、かな?」
あーまたやっちゃったよ。遅刻。
高校に入ってから、遅刻せずに学校に行ったことなんかほぼない。
「んも、起こしてって言ったじゃん」
「俺も寝てたもん」
ちゃんと名前も知らない男と。
私は毎朝そんなふうに目覚めていた。
「アキラ?」
「誰と間違えてんの、はは」
「んーアユム?か」
彼の頬を手で包む。
「まだ酒抜けてないんじゃない?」
彼はそう言って私の胸を弄る。
「ちょっと、ぁ、やめてよね」
「もう一回する?」
「やだよ、あたし、学校いくからあ」
「にーの」
彼は私の顎を持ち上げキスを落とす。
「んっ、もー」
どんどん深くなるキス。
「ちょ、も、これ以上休めないんだから、また今度ね」


ーーーーガチャ

はぁ
大きなため息。
私は最近隣街のクラブのVIPルームにずっといる。
たまに有音もついてきてくれるけど、なんか罪悪感で。
適当な男の人とキスして乾杯して顔が良ければ私の家かホテルに帰る。

私の容姿で16歳とかいうと男はホイホイ寄ってくる。これじゃ犯罪だよ、とか言いながら私のことを抱く。

死んじゃったお父さんだけど、お父さんの名前を使えば簡単に未成年の私でも通用する。
もちろん私の見た目と。

高校にはちゃんと通えてない分、いろんな噂が立っていて。

たまーに朝、真夢に会うとすごく気まずい顔をされる。
私と同じ高校にわざわざ入らなくても良かったのに。

私はいつもそう思っていた。

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