こじらせ社長のお気に入り
「笹川ちゃん」

「は、はい」

「俺、枕営業なんて、したことないから」

なにこれ。
ここにきて、これまでに見たことがないぐらい真剣な目をして、私に訴えてきた。
とりあえず信じるのに。
副社長の言葉添えがあれば、間違いないって納得するのに。

あっ、ということは、社長が言うだけじゃ、完全には信じていなかったかも……?

「わ、わかりました」

「俺、そんなものに頼らなきゃいけないような、チンケな仕事はしてないから」

その言葉にハッとした。

この会社に決めた時の、自分の気持ちを思い出した。今ここにいる2人は、本当に凄い人だって尊敬したんだった。

社長はいつもすごく軽くて、つい適当にあしらいがちだった。すっごく失礼なことをしていたと、後悔の念が湧いてくる。

「ご、ごめんなさい。つい、普段の言動だけで……あっ……」

しまった。これじゃあ、謝罪どころか、なにげに社長を落としてるじゃないか……

副社長が、再び肩を揺らしている。おさえようとしているけれど、バレバレだ。
それを社長がジロリと睨む。まあ、相手にされてないようだけど。


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