必殺スキル<子守り>だけで公爵夫人になっちゃいましたが、ほのぼの新婚ライフは幸せいっぱいです
 アルの苦言に驚いたのは、エイミだった。

「えぇ~? 公爵? この人が?」

 エイミは大男を見つめて、言う。

「そう、この方がジーク・ハットオル公爵だ。君ごときが部屋に入るなど無礼きわまりないことだよ」
「この人が公爵様……」

 エイミは心底驚いていた。

「ジーク様じゃなきゃ、誰だと思ってたんだ? この城にはほとんど人がいないと言ったろ」
「はい。ですから、庭師のトマスさんかと……」
「トマス爺は御年六十だ。それも言わなかったか? ジーク様はまだ二十七歳だぞ。どうしたら、そんな勘違いがおきるんだ?」
「そうですよね……お爺さんにしては、若々しいなぁと私も思っていて」
「……烏ちゃんはナチュラルに無礼だね。ジーク様、怒っていいところだと思いますよ」

 アルが大男、もといジークを見上げた。

「別に。なにも気にしていない」

 ジークは口をへの字にしたまま答える。

「嘘だ。その顔は結構ショックを受けてますね」

(ショック……だったかな? 二十七歳を六十歳と間違うのはやっぱり失礼だったよね。でも、二十七歳には全然見えないけども)

 エイミはいまさら自分の失態に気がつき、後悔した。言わなくてよいことを言ってしまった。彼女はこれまであまり人付き合いをしてこなかったので、相手の気持ちを慮ることが苦手なのだ。
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