必殺スキル<子守り>だけで公爵夫人になっちゃいましたが、ほのぼの新婚ライフは幸せいっぱいです
 この手の募集は時々あることだった。いわゆる人買いが村にくることもある。貧しい村にとっては、提示される金額は飛びつきたくなるようなもので、希望が殺到する場合もある。
 もちろん、売られた娘がその後幸せにしているかどうかは誰も知らない。が、残された家族はそれなりの幸せを手にできるのだ。

 今回もさすがは領主といった金額が提示されていた。とはいえ、あくまでも田舎の農民であるエイミ達にとっては高額というだけで、それが適正価格なのかどうかはわからないが。

 それでも、今回ばかりは手を挙げるものはいなかった。というのも、ノービルドの領主は残虐公爵と呼ばれていて、すこぶる評判が悪いからだ。
 なんでも、領内から美しい女をさらってきては子どもを産ませる。だが、女も子どもも、飽きてしまうと殺すか捨てるかのやりたい放題なのだそうだ。
 村の皆も、大金と引換とはいえ、さすがに殺されるために娘を差し出すほど非情にはなれないのだろう。

 だが、繰り返すが、神様の命令は絶対なのだ。差し出せと言われたら、差し出さねばならない。

「あの、下働きならば、その~、容姿を問われるわけではないですよね?」

 村長がおずおずとそう口にした時から、エイミは嫌な予感がしていた。
 そして、見事に予感は的中した。

 村内会議の結果、生贄はエイミに決まったのだ。両親はなぜかずっとヘラヘラと笑っていた。そのくせ、エイミとは決して目を合わせようとしない。

「ほら。ミアは今年で16歳になるでしょ。ぜひ嫁にとあちこちから声がかかってるの。アイリーンはまだ子どもだけど、皆が村一番の美貌だって。村長の息子の嫁も夢じゃないって」
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