必殺スキル<子守り>だけで公爵夫人になっちゃいましたが、ほのぼの新婚ライフは幸せいっぱいです
 数日後、スペシャルな助っ人が遠路はるばるやってきた。

 ジークは苦虫を噛み潰したような顔で、彼女を見た。

「ゾフィー。腰痛をしっかり完治させるまでは故郷で養生しろと言ったはずだが……」
「いいえ。坊ちゃんの結婚となれば、黙っているわけにはいきません」

 ゾフィー婆やは白髪の小柄な老婆だった、腰痛のためか杖をついている。が、療養中だとはとても思えないほど、発する声はかくしゃくとしている。

 ゾフィー婆やは、エイミをじろりとにらみつける。エイミはびくりと肩を震わせた。

(これは、もしかしなくても……嫌われてる?)

「平民の娘、だそうだね」
「は、はい! 女中として雇われて、ここに来ました」
「ふぅん。女中から公爵夫人とは、うまいことやったもんだ」
「は、はぁ……いえ、そんなつもりでは!」

 嫌味を言われていることに気がつくのが、エイミは普通の人より一歩遅い。
 ゾフィー婆やは、ふんと鼻をならす。

「まぁ、それはいいさ。坊ちゃんを結婚する気にさせてくれたのなら、平民だろうが異国人だろうが、万々歳だ。私がいくら言っても、頑として首を縦には振らなかったんだから、あんた大したもんだよ」

 ジークが横から口をはさむ。

「ゾフィー。いい加減に、坊ちゃんはやめてくれ。いくつだと思ってるんだ」
「いくつになっても、坊ちゃんはゾフィーの可愛い坊ちゃんですよ」

 ゾフィー婆やはジークを軽くいなすと、エイミを見据えた。
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