新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~
 大変だし、これから忙しくなるけれど、こんなにも仕事が楽しいと思えたのは初めてだ。

 それにジョージさんも、褒めてくれた。単純な発想だけれど、仕事を頑張ることで彼に近づける気がするの。

 今回のフェア、絶対に成功させたい。その思いで連日残業して準備を進めている。

 静かな廊下を突き進み、エレベーターに乗って一階に降りる。玄関を抜けて外に出ると多くの人が行き交っていた。
 一度足を止めて振り返る。目の前には大きな本社ビル。

「ジョージさんもまだいるのかな」

 この三日間、ずっとジョージさんは仕事が終わると、社長室に向かっている。そして社長と遅くまで話しているようだ。

 歩を進めて最寄り駅へと向かう中、思い出すのは三日前に金子さんたちから聞いた話。

 婚約破棄を申し入れて一ヶ月近く経って、やっと社長はジョージさんと金子さんの婚約破棄を受け入れた。

 しかしそう話す三人の表情は曇っていた。それもそのはず、婚約破棄には条件を出されたからだ。

 共同で開発を進めていた新商品に関しては白紙。婚約破棄が知られたら、会社に居づらくなるだろうからと理由をあげ、金子さんは退職するよう遠回しに言われたそう。
< 112 / 277 >

この作品をシェア

pagetop