新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~
 よかった、ジョージさんはいないみたい。やっぱりもう家を出たのかも。

 ホッと胸を撫で下ろし、リビングに入るタイミングを窺う。

 ラブラブな雰囲気漂う部屋に入るには、それなりに勇気がいるものだ。

 聞き耳を立てて様子を窺っていると、突然不機嫌なジョージさんの声が聞こえてきた。

「お前ら、俺がいることを完全に忘れているだろ」

 てっきり会社に行ったとばかり思っていた私は、びっくりして悲鳴を上げそうになり、慌てて口を手で覆った。

 まさかジョージさんがいるなんて……! よ、よかった。安易にリビングに入らなくて。
 うっかり入っちゃったら、逃げようがないもの。

「やだ、私と陸がラブラブだからって不機嫌にならないでよね」

「羨ましかったらジョージ、お前も早く彼女を作れ」

「そうそう。作ればいいのよ。私たちみたいなベストパートナーを。ね、陸」

「な、彩香」

 見なくてもわかる。ふたりのラブラブっぷりが手に取るように。いつもの日常だ。大家さんと金子さんに、ジョージさんが突っ込む。

 でも本当にいつもの日常? 私が部屋に入ったら、急に空気が変わったりしない? ジョージさん、戸惑わない?
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