クールな王子は強引に溺愛する
「ゾーイをご存じですか?」
「ああ。彼女を魔女と呼ぶ人もいる」
「だからキッシンジャー卿も逃げ出したのですね」
慌てふためいた表情を思い出し、納得する。
「それはうれしい誤算だったな。ゾーイは護衛よりも力がありそうだ」
「まあ」
エミリーは楽しそうにクスクスと笑う。エミリーは実によく笑うようになった。
「さあ。食事の時間になる。行こう」
気持ちが塞いでいた頃は食事も部屋でばかり取っていたが、王妃からのお誘いを受け晩餐に同席するまでになった。
陛下も伯爵や騎士達との会食がない場合は、同じテーブルを囲む。
エミリーの姿を視界に捉えた陛下は、エミリーを気遣う言葉をかけた。
「体調はもういいのかね。リアムが無理をさせたようだ」
どこまで陛下の耳に入っているのか。既に初夜も済ませた夫婦なのだと、聞き及んでいるのだろうか。
どこか気恥ずかしく思いながら、晩餐にと声をかけてくれた王妃に「晩餐へのお招きありがとうございます」と頭を下げたあと、陛下には「部屋に篭りきりでした無礼をお許しください」と頭を下げる。
王妃は優しい微笑みを浮かべ、「来てくれてうれしいわ」と、物腰柔らかに応じた。その横で、陛下も穏やかに告げる。
「無礼とは思っておらぬ。体を大切にし、いつまでもリアムを支えてやってくれ」
目を細め、親愛を感じる眼差しに胸が熱くなる。