クールな王子は強引に溺愛する
エミリーの不安げに揺れる瞳を向けられ、胸が騒ぐ。不埒な感情は簡単に顔を出し、頬に手を伸ばす。
「口付けは、体に障らないだろうか」
「え、ええ、はい」
目を瞬かせ、戸惑いがちに伏せられるまつ毛が小さく震えている。ゆっくりと唇を重ね、指を頬に沿わせ動かすとエミリーは肩を縮めた。
「離れがたいが、俺がいては休めぬな。隣の部屋にいる。なにかあれば……いや、俺ではこの場合頼りにならないか」
頭をかくリアムに、つい笑みをこぼす。
「お気持ちだけで十分ですわ」
穏やかな表情を残し、リアムは部屋の中ほどにある扉を開き、隣の部屋に移った。早めに出て行くつもりだったのだろう。食事は早々に食べ終えていた。
ゆったりとふたりで食事をすることは叶わなかったが、こんな体調の日にまさか幸せな余韻に浸れるとは思いもよらなかった。
リアムのジェシカへの想いを考えると胸が痛むけれど、リアムは前を向きエミリーと共に生きていく決意があると示してくれた気がして、うれしかった。