クールな王子は強引に溺愛する

 早馬で二日かかるところを五日かけた馬車旅もそろそろ終わる。眠る前の僅かな時間、リアムと話すのが恒例となり、特にお互いの兄弟の話をした。

 リアムは兄を尊敬しており、次期国王は兄である『バージル』こそが相応しいと思っていると話した。だからこそ自分は騎士団で元帥まで登り詰め、王国の安全を守り、兄をサポートしていきたいのだと。

 素晴らしい兄弟愛にエミリーは胸を熱くした。

 エミリーもまた、次期当主となる弟のブライアンについて話した。心根の優しい弟で、だからこそ商才の方を開花させてほしいと、その土台になるように出来る限りの行動をした。

 領地の名産になりそうなものを幾つか見出し、軌道に乗りつつある。

「そうか。野苺ジャムか」

「はい。甘酸っぱくて、とても美味しいのですよ。パンに塗ってもいいですし、肉料理のソースにしてもよく合います」

「ほう。それはうまそうだ」

 こんな話をして、長い年月で離れていたお互いの距離を縮めていった。
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