ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています

両親が切りつけられたあの現場の方が凄惨だったと考えてロザンナが肩を竦めてみせると、彼女はやっと笑みをこぼした。


「花嫁候補のご令嬢様方はみんな自分の身分を鼻にかけた様子なのに、ロザンナさんは違うのね。私、ピア・ワイアット。良かったら、診療所でのお話を聞かせてください」

「えぇ、もちろんよ」


ピアとロザンナが打ち解け始めた時、ゴルドンが教室に入ってきた。

場所を吟味するかのようにうろうろ歩き回ったあと、通路側の壁に立派な額に入った賞状を飾る。そして満足げな顔で生徒たちへと振り返った。


「魔法院からの感謝状だ。この前の見学時、みんなが自ら手伝いを進み出たことへのものだぞ。誇って良い。迅速に治療を進められたことで助かった命もあった」


一斉に教室内が喜びの声で溢れかえる中、ピアがぐすっと鼻を鳴らす。


「良かった。間違いではなかった」


涙を浮かべたその横顔へ「ピア?」と声をかけると、彼女はほんの一瞬、窓際に座る女子生徒ふたりへ切なげな眼差しを送る。

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