ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
「なにそのため息。こっちがびっくりよ。さっきから挙動不審でおかしいし、この前一緒に観劇した……あの役にそっくり」
「あぁ、モンスターに追い詰められて最後に殺されたやつね。確かに私、ヒロインと同じ心境」
「いや、似ているのはヒロインじゃなくてモンスターの……」
聞き捨てならない台詞が続きそうでロザンナがじろり見やると、ルイーズはすぐさま言葉を途切らせ、大きな咳払いで自分の言葉をなかったことにする。
「とにかく馬鹿なこと言ってないで、マリンを見習ってしゃんとしていなさいよ。仮にもあなたはアルベルト王子の花嫁候補として最有力なんだから」
ぴしゃりと注意されるも、ロザンナに背筋を伸ばす様子はない。逆に、頭を抱えて項垂れる。
「本当に自分が信じられない。なんで最後の最後で良い成績取っちゃったんだろ。私はマリン推しを貫き通して、煽らず騒がず穏便にここを卒業するつもりでいたのに」
床に向かって怨嗟のごとくボソボソ呟いていると、「ロザンナさん!」と声がかかる。ロザンナは顔を上げ、ぎょっと身をのけぞらせた。
目の前には十人近い婚約者候補たち。揃ってキラキラした目でロザンナを見つめている。