時の止まった世界で君は
お昼になって昼の放送がなる。

この病院では、患者さんがご飯の時間がわかるように朝、昼、夜と数時間おき放送がなるようになっていた。

俺は、やっていた仕事を一度止めてキリのいいところで保存する。

デスクの上から今朝コンビニで買ったおにぎりとお茶を取って医局を出た。

向かう先はなつの部屋。

お昼に売店に行く約束をしているから、ついでに一緒にお昼を食べようという算段だ。

病棟の廊下に並ぶ食膳ワゴンからなつの分のご飯をついでに持っていってやる。

「なつー、お昼持ってきたよー」

病室に入ると、なつはすやすやと眠っていた。

「なつ、お昼だよー」

軽く肩を叩いて起こしてやると、なつは眠そうに目を擦りながらゆっくり起き上がった。

「あれ、ひろくん?なんで?」

「なつと一緒にお昼ご飯食べようと思ってさ。ダメかな?」

「いいよお 一緒に食べよ!」

ご飯が乗った机をなつの高さに調整する。

「あ!今日はなつの好きなうどんだね。やったね。」

「うん!ひろくんは、なにたべるの?」

「俺は買ってきたおにぎり。」

そう言って、コンビニの袋からおにぎりを取り出して机に並べる。

今日は、いくら、鮭、コンブだ。

「おなかすかない?」

「大丈夫だよ。3つもあるからね。」

「そっかあ」

そう言うと、なつはフォークを持って嬉しそうにうどんをすすり始めた。

ご飯を食べている時のなつはいつもとても幸せそうだ。

その笑顔を見ているだけで、心が癒される。

「喉に詰まらせないでね」

「うん!」

なつは、起きたばかりだと言うのにすっかりいつもの元気な調子に戻っている。

少しだけほっとした。

朝の検査でだいぶ凹んでいるかと思ったから、またこうして笑顔が見れたことが何よりも嬉しかった。
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