時の止まった世界で君は
「ひろくん!ご飯食べ終わったよ!アイス!!」

そうはしゃぐなつを愛おしく思いながら「はいはい」と席を立つ。

「ひろくん!はやく!」

「まって、そんなに急がなくてもアイスは逃げないから。」

ほっといたら今にも駆け出しそうななつと手を繋いで安全を確保。

それでも、なつの引っ張る力は凄くてアイスに対する執着心に少し笑ってしまう。

エレベーターを待つ時も、なつはずっとニコニコして落ち着きがない。

正直、そんなに喜んで貰えるとは思っていなかった。

凹んだ心を癒すくらいかと思っていたが、アイスの力は絶大で、その倍くらいになつを元気にさせていた。

ああ、幸せだなあとふと思う。

笑顔のなつがいて、アイスだけでこんなに喜んではしゃいでくれる。

元気の有り余った姿も、楽しそうな笑い声も全てが愛おしかった。

「ひろくん!こっちー!」

「はいはい、そんな急かさないでー」

ここが病院ということを忘れさせてくれるくらい、なつは元気で明るかった。

なつがなんで入院してしまったのかなんて、薄れてしまうくらい。

コンビニに入り、アイスコーナーに向かう。

沢山並ぶアイスを見たなつの目はキラキラと輝いていた。

「うわあ…いっぱい!!」

俺には見慣れたパッケージだが、普段あまりアイスを食べないなつにとってはそのパッケージが宝石のようにでも見えているのだろうか。

それくらいの喜び方だった。

なつは、どれにしようかと楽しそうにアイスを選ぶ。

それで結局買ったのは、最初はイチゴだと言っていたのにフルーツが沢山乗った小さいパフェアイスだった。
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