時の止まった世界で君は
なんか拍子抜けして、とりあえず良かったと思い医局に戻り電子カルテを入力していく。

なつみちゃんのことも書き終えた所で、ちょうど染谷先生が戻ってきた。

「染谷先生、お疲れ様です。」

コーヒーを入れてデスクに持っていくと、染谷先生は伸びをしてからそれを受け取った。

「おう、お疲れ。なつの様子どうだった?わがまま言ってなかったか?」

そう笑って言うものの、言葉の裏に隠れた心配が透けて見える。

「大丈夫そうでした。思っていたよりもケロッとしていて、部屋でテレビを見て楽しんでいましたよ。」

そう言うと、染谷先生は少し渋い顔をする。

…何かまずいことを言っただろうか……

自分の言葉を振り返るもどれがいけなかったか検討がつかない。

「…どうか、されましたか?」

恐る恐るそう聞くと、染谷先生は頭をかいてから考え込むような表情をして口を開いた。

「……いや、空元気じゃなきゃいいなって。あいつ、すぐ強がろうとするから…。」

そう言った染谷先生は、少し寂しそうに笑った。

「まあ、とりあえず様子見てくるわ。ありがとうね。」

「い、いえ……」

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