透明な世界で、ただひとつ。


「意外と乙女趣味なのね。」

「姉ちゃんの影響でな。」

「へぇ。」



会話が途切れた。

ただお皿とフォークが擦れる音だけが耳の奥まで響く。



「そういや、推薦ってどこ行くの。」



沈黙に耐えられず捻り出した質問はかなり不躾なものだった。



「白川の観光学。」

「いいとこじゃん。」



いいんだ、簡単に教えてくれちゃって。

でも、堺の行く大学は正解だと思う。設備も立地も学ぶ場所としては最適。
国立に行くために無茶したり、逆にレベルを下げるよりも何倍も賢い選択。

私も目のことがなければ白川学院大に行ければと思ってただろう。



「ごちそうさまでした。」



チーズケーキの乗っていたお皿には小さな欠片も残さなかった。

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