透明な世界で、ただひとつ。

たったひとつの道しるべ



卒業式予行、久しぶりに制服に腕を通した。

柚香の補助もあって、2カ月半ぶりに学校を訪れた。



私が教室に入ると白杖姿の私を見てか、明ら教室内がざわめいた。

机まで来ると、手を伸ばして椅子を探す。



「堺、いるのわかってるけど、なんで黙ってるの?」

「あれ、もうわかるようになった?」

「堺がいつもしてるコロンの匂いがするからね。」



私の言葉にすんすんと堺が鼻を鳴らす音がする。



「そんな心配しなくても、匂いが強いわけじゃないから。」

「それならいいけど。」



手で探し出した座面に腰掛ける。



やっぱり突然クラスメイトが白杖になれば、これだけ驚くのも致し方ない。

私の場合、最近になって急激に視力が落ちたこともあり、休み前は普通にコンタクトで生活出来ていた。

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