【タテスクコミック原作】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
その男が、侑李さんとどういう知り合いかは知らないが、酔った女性を連れ去るなんて、言語道断だ。
走り回っていたせいか、額に纏わりついていた汗が雫となって流れ落ちていく。
まるで冷や汗のように、目に入ってそれが沁みて痛い。嫌な予感しかしない。気ばかりが焦る。
ーー落ち着け、落ち着け。どうすればいいかを考えろ。
「……」
なんとか落ち着こうとするも、嫌な音を立て続ける胸がザワザワとして落ち着かない。
最悪なシナリオが頭を掠め、不意にある人物の顔が浮かんではきたが、どうにも憚られる。
思案している僕の隣で、僕と同じことを思ったらしい涼の声が虚しく響き渡った。
「それ、ヤバいんじゃないか?」
涼の声で、もう迷っている場合じゃない、そう判断した僕は、スマホの画面にある人物の名前を呼び出して、迷わず通話ボタンをタップした。すると。
『何? どうしたの? 急にこんな時間に。もうセフレは必要ないんじゃなかったの? まぁ、気が変わったんなら付き合ってあげてもいいけど。明日はちょうど非番だし』
数秒の短い間をおいて、寝起きなのか、気怠そうな声が聞こえてきた。