【タテスクコミック原作】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛

 宴もたけなわ。

 すっかりお酒が回っている様子の虎太郎さんが、上機嫌で話す声がだだっ広い大広間に木霊する。

「もうじき要の子供も生まれるし、まだまだ先だと思っていた隼もようやく身を固めようと思える女性に巡り会えて、本当に良かった良かった。これでもう私もいつでもあの世にいけるなぁ」
「そんな縁起でもない話はやめてくれませんか? 酒がまずくなりますから」
「ほう、要ももうすぐ父親になるだけあって、ようやく酒の味が分かってきたようだなぁ。ほら、もう一杯……といわず何杯でも呑みなさい」
「……分かりました。今日はとことん付き合いますので、戴きます」
「今日は嬉しいことを言ってくれるじゃないかぁ」

 虎太郎さんにいつもお酌しているらしい隼の代わりに、今日は兄の要さんが虎太郎さんの隣に寄り添っているらしかった。

 見かけは隼より身長も少し高くて、甘いマスクの隼とは対照的なキリリとした男らしい漆黒の眉と涼しげな目元から、ザルに見えるけれど、隼よりはお酒には弱いらしく。

 さっきから虎太郎さんの目を盗んでは、私の正面に居る隼と目配せして、お酒の強い隼のグラスとすり替えている様子が、なんだか微笑ましい。

 見た目は違っていても、やっぱり兄弟なんだなぁ。仲も悪くはなさそうだ……と。

 そう思ったのには理由があって。最初要さんと美菜さんと対面したときには、要さんの隼に対する口調と視線とがなんだか冷たい気がして。

 もしかして仲が悪いのかなと案じていたから余計だ。

 そんなことを思っていると、ふいに正面の隼と視線がかち合って、ニッコリとキラキラのキラースマイルで微笑みを返してくれた隼。

 ふたりだけの時でも、その威力が凄まじくて、魅入ってしまうというのに……。

 途端に意識しだしてしまった私の鼓動はドキドキと駆け足状態で、きっと顔も真っ赤になっていることだろう。

 そんな私に隣に座っていた美菜さんから、周りには聞こえないくらいの潜めた声がかけられた。
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