【タテスクコミック原作】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
*番外編*ある夜の秘め事

 隼と結婚してから早いもので、もうすぐ二ヶ月を迎えようとしている。

 もうすぐ十月。昼間はまだまだ暑い時もあるけれど、最近すっかり秋めいてきた。

 お腹の赤ちゃんも頗る元気で、妊娠四ヶ月を迎えた今では、お腹も少しふっくらとしてきて、服装によっては、一目で妊婦だと分かるまでになっている。

 相変わらず隼は優しくて、家で居る時には、殆どの家事をやってくれていて。

 どっちが主婦なのかと思ってしまうくらいの手際の良さを披露してくれている。

 それなのに、それだけでは飽き足らないのか、心配性を遺憾なく発揮して、近頃では、会社に居る時にまで、暇さえあればメールや電話をかけてきて。

『今日は外がずいぶんと暑くなっているみたいだから、部屋の温度が高くなりすぎないように気をつけて。あっ、でも、あんまり冷やしても駄目だよ』とか。

『妊婦さんはよく動いた方がいいとか言うけど、あんまり無理しちゃ駄目だよ。ご飯はちゃんと食べた?』などなど……。

 一日に何度かかってきたか分からないほどかかってくることもあるほどだった。

 そんな時には毎回、先月お兄ちゃんの奧さんになったばかりの恵子さんに、ニマニマしたにんまり笑顔と、からかいの言葉までお見舞いされるのだ。

「もしかして、また、隼さん? 本当に侑李ちゃんってば愛されてるわよねぇ。家では家事の殆どをしてくれるって言うし。仕事が終わる頃には、毎日欠かさずお迎えにも来てくれてるし。妊婦検診にだって必ず付き添ってくれてるんでしょう? もう、なんか凄すぎて、毎回毎回、ごちそうさまです。って感じだわぁ」
「あらあら、また侑李ちゃんの旦那さんのこと?」
「そうなんですよ。また電話があったようなんですよ」
「まぁ、本当に仲がいいわよねぇ。この分だと、出産してもすぐにオメデタになっちゃうんじゃないの〜。ふふっ、さすがは新婚ホヤホヤねぇ。恵子ちゃんも負けてられないわねぇ? 早く子づくりしないと」
「もう、ヤダァ。恥ずかしいじゃないですかぁ。幸子さんったらぁ」
「もー、幸子さんまでッ! イチイチ寄ってこなくていいからッ! さっ、仕事仕事ッ!」

 新婚ほやほやの恵子さんにひやかされていると、昨年亡くした母の代わりにずっと女将代理として頑張ってくれてた、幸子さんまでが恵子さんに加勢し始める始末。

 因みに、幸子さんには、私と恵子さんの指導係兼女将代理を勤めてもらっている、

 いつもはまだまだ半人前の私達に、厳しく指導してくれている幸子さんまでが恵子さんと一緒になってひやかしてくるから嫌になる。

 いつもの如く、堪りかねた私は、同じ見習い若女将である恵子さんだけでなく、指導係の幸子さんまで注意する羽目になった。

 入籍してすぐの頃、隼に、『僕の夢を叶えてほしい』というお強請りをされてから、隼の夢を叶えるために私が若女将の修行を始めて約一月半が経った今では、もうすっかりお馴染みの光景となっている。

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